SPIRITS-BAR

□龍狼−虎を追う者−
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それは、突然に。
或いは、唐突に。

ゲームは静かに
幕を開ける

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龍狼−The person who chases a beast−
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―――PM 7:25 車内

『緊急事態発生ッス!』

糸鋸からの電話を受けた御剣の顔が、途端に青ざめる。
「了解した、彼女達を署内へ搬送、保護し、現場保留にて待機だ!我々も直ぐ向かう!」

助手席に在る三本のラインは、無線のコードを鈍く光らせる。

「ゴドーだ。特犯を緊急召集させてくれ。それと公安に主要架橋の検問を。急げ」

何時もならば静かな街並。幾度も通った、あの事務所迄の見慣れた景色。
それが…今は。

「クッ…確かに緊急事態、だぜ…」
「…………。」

ハンドルを握る手に汗が滲む。今更、現場急行した所で何の解決にもならぬ事位は判る。
しかし、行動せずには要られなかったのだ。
タイヤが時折、悲鳴を上げている。

「現況はどうなってるんだい?」
「被害者は…成歩堂龍一。事件が発覚したのは午後7時前後。菓子と脅迫文が入った袋が事務所入口に掛けられていたという。発見者は、綾里春美。袋には血痕。脅迫文の内容は現場にて確かめた方が早い。…行くぞ、神ノ木。」

成歩堂法律事務所へと着くや否や、御剣は車席から飛び降りる様に降り立ち、直ぐさま二階への階段へと駆け上がってゆく。

「やれやれ…落ち着きのねぇボウヤだぜ…」

ゴドーはゆるりと車から降りると、ジタンを取り出し灯を点した。
そして、ぐるりと辺りを見回す。

ホテル・バンドーが闇の中その存在感を優雅に写し出している。隣合う雑居ビル達は、人の出入りこそあるが…余り目につく物は無い。

(この様子じゃ…目撃者など皆無…だぜ)

この辺りは夕方頃になると、帰宅者や学生等で比較的人通りが多い。
しかし、この雑居ビルに出入りした者を聞き込むなど無意味にも程がある。

(虎が出入りなんぞすりゃ、たちまち大騒ぎ…だぜ)
恐らく、その袋を掛けに来た人間は無機質な者であったと、ゴドーは推測した。

虎に係るか否かは別として…こういった類いのメッセンジャーなどは何処ででも拾えるのだ。

(クッ…虎のテリトリーは密林のジャングル、って訳か…)
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