DINING-BAR
□彼
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人は何故
人に憧れるのだろう
憧れるからこそ
真似てみたりもするが
似合う筈もなくて
僕は所詮、
僕でしかない……
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Turn2《《彼》》
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「…ええ、ではその様に…はい、では明日ですね。お待ちしています」
…プツ…。
「これでよし、と。」
成歩堂は、うーん、と背伸びをした。朝から今迄、数少ない依頼の手配をしていたのである。
しかしながら…どうも効率が悪く、おまけに自分自身が苦手とする案件であった故…午後まで掛かってしまったのだった。
(うわ…もう2時だよ…)
腕時計を覗き込みながら、余りの手際の悪さに、自己嫌悪し…鉢植えを蹴る。
しかし、びくともしないものだから、余計シャクに触ってしまった。
(大体、すぐ離婚する位なら結婚なんてするなよな…)
その案件とは…成歩堂が尤も苦手とする【離婚調停】だったのだ。
法律が改正されたせいもあって、熟年離婚も多い。そんな世中にあって、離婚調停は苦手です等とは口が裂けても言えなかった。
…正確には、それ以前の問題であるのだから。
(大事な収入源だしな…働かざるもの食うべからず……)
その食うという台詞を、待ってましたとばかりに……
グゥぅぅ…
地鳴りのような音が鳴り響く。
(うう…なんて素直なんだ…僕の腹のムシは…)
この苛々も、空腹のせいに違いない…と成歩堂は軽く自己消化する。
とにかく…事務所に居ては空腹を満たす事も叶わない。
身支度を整え、さて何を食べようかと思案しつつ…成歩堂は足早に事務所を後にした。