「な、ちゅーしよ」


「………はあ?」



いきなり真面目な顔しながら何を言うのかと思えば、そんな間抜けというか何考えてんのコイツみたいな言葉だった。
今私達がいるのは公園で、夕方だけどまだちらほらと子供達が遊んでいる。
そんな公共の場でキスなんかできるワケがない。
(てか恥ずいねん!)

でも目の前にはすっごく真面目な顔した蔵。
なんだコイツ、欲求不満?
みたいな。
あたしはこんなとこでちゅーとか嫌だから、絶対させないけど。



「な、ダメ?」


「ダメに決まっとるやんか。こんな公共の場で。」


「ほな、二人っきりならええん?」


「まあそうやな。」



あたしがそう言うと蔵の顔が若干輝いたように見えた。
え、なんでそんな顔してんの?

蔵はパッと立ち上がると、あたしの手を引きながら何処かへ歩きだした。
頭がついていかなくて、何も言わずについていくと、着いた場所は人気のない路地裏で。
気が付けば背後に壁、正面に蔵とかいうすごく少女マンガにありそうな体勢になっているのである。



「なあ、なにこの体勢。」


「ムードでも出してみよか思って。」


「意味わからんし。」


「ええやん別に。な?」



そういって顔を近付けてくる蔵。
ちくしょう、こいつ無駄に顔がいいから恥ずかしいんだよ。
きっと私の顔は真っ赤だろう。

なんて、ぼーっと考えていたら頬に柔らかい感触。



「隙アリ、や。」



なんて普段見せないような、意地悪な顔で言われて、私は蔵に惚れるのだった。






(ああ、顔が熱い。)



 


ありがとうございました!



[TOPへ]
[カスタマイズ]

©フォレストページ