本棚W

□どうしてこんなに好きなのかしら?
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リディアは仕事部屋にある本棚の一番上にあった書物を落としてしまい、その際に腰も痛めてしまった。
幸いぎっくり腰とまでいかなかったが、それでも痛みはリディアの身体をじわじわと痛めつけた。
これはリディアが痛みと闘った数日間の出来事である。




「うぅ、痛い」
腰を痛めた次の日。
リディアはベッドに寝そべりながらズキズキと痛む腰を擦った。
寝返りを打とうと身体を動かせば、痛みの部分を捻ってしまう。
医者から痛みは日にち薬と貼薬しか処方されずリディアは途方に繰れていた。
「はぁ……」
ため息と共にあのとき無理に本棚から本を引っ張り出した自分を叱りつけたい気持ちでいっぱいになる。
するとそこへ妻の不調を心配したエドガーが入ってきた。
「リディア、大丈夫かい?」
駆け寄って来る夫に対し、リディアは弱々しい声で答えた。
「ダメ、痛くて向き変えれないの」
「それは大変だ」
エドガーはリディアが痛がらないように身体の向きを変えてやる。
「リディア、痛い?」
「いいえ。痛くないわ」
自分では痛くて変えれなかったのに、彼の力を借りれば全く痛くなかったことにリディアは些か恥ずかしくなる。

(これってやっぱり……夫婦の愛?)


「……リディア?顔が赤いけどどうかしたの?」
「へっ?いや、なんでもないわ。なんでも」
「そう、ならいいんだけど」
リディアは自分の恥ずかしい想像を欠き消すように首を振る。しかし頭の中はエドガーのことでいっぱいになってしまう。
自分を見つめる灰紫の優しい眼差し。
彼の唇から名を紡ぎ出されると、身体の中心に痺れるような、心が縛られるような感覚に陥ってしまう。
「リディア?」
「はぁ……。困ったわ。どうしてこんなに好きなのかしら?」
完全に自分の世界に入ってしまっている妻へ、エドガーは此方側に帰ってくるよう、優しい声音で名を呼んだ。
「リディア」
「……エドガー?」
我に返ったリディアは目の前にある夫の姿を捉え、再び頬を赤面させた。
そんなリディアの表情にエドガーも心を奪われ、様子を見にきただけの筈がそのままリディアの看病することとなった。
もちろん、看病ともう一つ……。



それでも二人の仲睦まじい“看病”を伯爵邸の使用人たちは誰も止めなかったそうな。














end





駄筆、乱文失礼致しました*(_ _)*ι

2012 3 7
管理人、水樹憂菜
 

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