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□アシェンバート家の愛娘1
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明朝から降り続く長雨は、一向に止む気配はないようだ。
そんな中、アシェンバート家の令嬢、エレンはお気に入りのヘアゴムを手に取り母親の元へと走る。
「おかあさまぁ!!」
「エレン!どうしたの?」
仕事部屋に息せきかけて駆け込んでくる愛娘のエレンに、リディアは何事かと駆け寄った。
自分と同じ、紅茶色の少しくせっ毛のあるロングヘアー。そして、父親譲りの灰紫の瞳。愛らしく微笑む姿はまさに天使そのものだ。
「お願い、おかあさま。髪をみつあみにして」
「エレン、もう少ししたらお仕事切り上げるから、それまで待ってて」
「は〜い!!」
素直に頷くとエレンは室内にあるソファーにちょこんと腰をかけた。



それから三十分後……

仕事を一終えしたリディアは、ソファーで待つ娘のエレンに目を向けた。
エレンは待ちくたびれたようでソファーの上で小さく寝息をたてて眠りについている。
「もう、エレンったらこんなところで眠ったら風邪引くわよ」
リディアはエレンの元へ行き、その体をそっと抱き上げた。
「可愛い寝顔だね。リディア似て将来美人になるんだろうな」
「えっ!エドガー。びっくりするじゃない」
不意に声がし振り返ると、いつの間にかエドガーが来ていた。
エドガーはリディアの腕からエレンを受け取ると、その寝顔にそっとキスをする。
「ちょ、ちょっと何してるの!」
「え、可愛いからキスしたんだよ」
「そっ、そんな……」
「ん?もしかして、妬いちゃった?」
「っ…ばかぁ!」
ツンとそっぽを向いてリディアはエドガーから離れた。
ふふっと笑みをもらし、エドガーはリディアに告げる。
「リディア、安心して。きみにはキス以上のことをしてあげるから」
「しなくていい!!」

そんな両親の間で眠るエレンは、


「らぶらぶぅ…」

幸せな夢をみているのだった。











エンド!!
 

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