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□僕の苦悩
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ロタが伯爵邸に泊まって早五日が経つ。
エドガーはいつまでも自宅へ帰ろうとしないロタに苛立ちつつも、その態度を表には出さず、アフタヌーンティーに出された紅茶をすする。
その仕草はなんとも優雅で、彼が苛立ちを覚えているなど誰も思わないであろう。
だが、その原因が自分だと気づいてないのか、ロタは彼に声をかけた。
「エドガー、なに考えてんだ?」
「……いや、別になにも…」
沈黙の後、エドガーはカップを置くと席をたつ。
「ちょっと、どこに行くんだ?」
ロタは何も言わずに出て行こうとするエドガーを引き止めようとする。けれど、
「きゃっ、きゃっ♪」
ロタが先程まで遊び相手をしていた双子のシオンとキャロルが、這って彼女の元へやってきたのだ。
双子たちの表情からは、《まだまだ遊んでほしい》のオーラが輝き放っている。
「シオン、キャロル…」
ロタはエドガーから離れ双子たちの前に座ると、また同じように遊びだした。
双子たちはロタに遊んでもらえて、ご満悦のようだ。
「……」
双子たちとロタが楽しそうに遊んでいるのを横目で確認すると、エドガーは部屋から出た。




「……悔しい……」




子どもたちのことは誰よりも理解しているつもりだった。
でも、先程の我が子の喜ぶ姿を目の当たりにすると、どうしても納得がいかない。
閉じた扉に寄りかかるようにして、エドガーはその場に座り込む。そして手のひらで顔を覆い、小さく呟いた。


「父親として、僕もまだまだ未熟だ」


三児の父親となった彼に待ち受ける試練は、まだまだ始まったばかりなのだった。






一方その頃、部屋で双子たちと遊んでいたロタはなかなか帰ってこないエドガーに対して、
「エドガー帰ってこないな。あっ!もしかしてトイレか!?」
的外れな予想をしているのだった。











おしまい。
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