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□揺れ動く気持ち
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ほんの数ヶ月前までその場所はティルの特等席であった。
しかし、双子のシオンとキャロルが誕生してからはその場所は双子たちのものとなってしまったのだった。


《揺れ動く気持ち〜ティル〜》


「お母さま、入っていい?」
「ん?ティルなの?いいわよ」
お昼ご飯を終えたティルが、母親のいる部屋へと入るとソファーに腰掛け、リディアが自分の膝に双子たちをのせ、あやしていた。
「ティル、こっちへいらっしゃい」
「……うん」
部屋の前で佇み、なかなか入って来ない我が子を呼び、リディアは再び双子たちへと視線を落とす。
その様子に少しばかり寂しさを感じながらティルは母親の隣にちょこんと座った。
ちらりと横目で母親の姿を見ると、弟と妹は幸せそうな眠りについている。
「………」
何やら視線を感じ、リディアがティルの方に目を向けると、ティルがじっと双子たちを見つめていた。
「ティル?」
気になりリディアが声をかけると、ティルははっと我に返ったように視線を反らす。
その仕草が余計気になってしまい、リディアは膝の上で眠る双子たちをソファーに寝かせ、ティルの方に向き直った。
「ティル、さっきからどうしたの?」
「……」
暫く沈黙したのち、ティルはこう呟いた。
「……お母さまの膝はもう僕だけのものじゃないんだね」
「ティル……」
息子が話した内容の意味に、リディアは気がついた。

〔母親の膝はもう自分が優先的に座れる場所ではなくなった。
なぜなら双子たちがその場所をとってしまったからだ〕

兄として我慢しなければならないと思う気持ちと、まだまだ甘えたいという両極的な感情に挟まれ、それが今のような態度になったのだ。
リディアはふっと微笑み、ティル引き寄せ自分の膝の上に載せた。
「お母さま?」
母親の行動にティルはキョトンとした様子で母親を見上げてくる。
「シオンやキャロルが眠っている間は、膝の上で絵本を読んであげるわね」
「え!!ほんとに?」
リディアが頷くと、ティルは満面の笑みを母親に向ける。
我が子の小さな葛藤心に可愛いさを感じつつ、リディアはティルの髪を撫でた。











おしまい?









おまけエピソードとか、あるかも(笑)
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