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□紅茶よりも美味しいもの
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とある伯爵家の午後。
エドガーは妻のリディアと共に仲睦まじくティータイムを楽しんでいた。
「リディア、この紅茶とっても美味しいね」
「ええ。やっぱり淹れ立ては味がしっかりしていて薫りもいいわ」
カップから漂う紅茶の匂いをん〜っと嗅ぐと、リディアは紅茶をすすった。
程好い甘さが口の中で広がり、もう一口とカップを傾けたところで、なにやら彼がこちらに視線を向けているのに気付いた。
「エドガー、どうしたの?あたしの顔に何かついてる?」
「いや、なんでもないよ。ただ……」
「ただ?」
エドガーは言葉の続きを言わないまま、席を立ちリディアの傍に向かう。
そして、風になびく彼女の髪を一房掴み優しく口づけた。
「なっ、エドガー!」
夫の行動に声を荒げて赤面するリディアに、エドガーは柔和な笑みを向ける。
「紅茶よりもきみの方が美味しいってこと」
「――っ!」
耳朶まで真っ赤になり、リディアは目線でエドガーに訴えかける。

《何言ってるの!早く髪を離して!》


しかしエドガーはまったく違う解釈をする。
「えっ、そういう甘い台詞は人気のない場所で囁いてって?わかったよ。愛しいきみの願いなら僕はいつだって囁く。もちろん、二人っきりで“誰にも邪魔されない”場所でね」
「ち、違うわ!あたしはそんな……」
「お母さま、お父さまとらぶらぶしないの?」
そんな夫婦の元へいつの間にやってきたのか、愛娘のエレンがひょっこり顔を出したのだ。エレンは母親が父親の“誘い”の意味を知ってか知らずか、とにかく母親が父親を嫌っているのかも知れないと解釈したようであった。
「エレン、別にお父さまを嫌っているわけじゃないから安心して。それにお母さまいつもお父さまと仲良くしているから少しくらいラブラブしなくても大丈夫なのよ」
リディアはエレンに言い聞かせるようにして説明するが、エレンはブンブンと頭を左右に振り、涙で瞳をうるうるさせはじめた。
「だめっ!今もこれからもずっとずっーーとらぶらぶしてほしいの。エレン、お父さまとお母さまがらぶらぶしていると嬉しいの。お母さまがお父さまと仲良くしていないとエレン、悲しくなっちゃう……」
「エレン……」
溢れ落ちそうになる涙を堪える愛娘を、リディアは抱き寄せた。
「エレン、お母さまはこれからもずっとずっとお父さまのことを愛し続けるわ。もちろん、エレンのこともずっと愛しているわ」
「ほんとに?」
「ええ。エレン、あなたに嘘はつかないわ」
リディアの言葉にエレンの表情はみるみるうちに笑顔になっていく。
「じゃあ、今かららぶらぶするのね!!わーい、エレン、ケリーお姉ちゃんのところへ行ってくるっ!!お父さま、お母さま、仲良くらぶらぶにねぇ〜〜!」
「エ、エレン!ケリーのところって…まさか!?」
リディアの疑問は走り去る愛娘には届いていなかった。
慌てて追いかけようとするが、その身体はエドガーに掴まえられ、彼の元へ引き寄せられる。
「リディア、エレンは僕たちが仲良くしていると嬉しいって。だからエレンの気持ちを傷つけないように今からラブラブしよう。いや、ずっと…かな」
「もう、それどこじゃないわ。今回もやっぱりケリーが関わってるみたいなのよ!ケリーに直接聞いて…ってエドガーあたしの話を聞いてちょうだい!」
「きみの甘い声は寝室で思う存分聞かせてもらうから」
「違うってば!!!!!」
リディアが必死になってエドガーから逃れようとするが、彼は上機嫌のまま、リディアを連れてテラスを後にした。








このあと毎度の如くラブラブでお熱い夜を迎えたエドガーとリディアなのでした。
















ケリー「――順調に進んでいますわ。このまま旦那さまと奥さまには……ふふふ!!侍女の作戦はまだまだこれからです!」


夫婦の愛娘エレンをも巻き込み、侍女の企みは続く……













〜続く...かも〜(笑)
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