本棚W

□リディアにかまってもらえない彼のストレス発散法
2ページ/2ページ


「ねえリディア、今日はいいよね?」
昨日も一昨日もリディアがお仕事に時間を費やしした為、今日こそはと心を踊らせながら仕事部屋のドアをノックした。
しかしドアの中から返ってきた妻の返事はたった一言、
「忙しいからダメ」
の冷たい台詞だった。
「………わかった」
エドガーは素直に返答すると踵を返し自らの書斎へと向かう。
そして、書斎に設置されたソファーに身を投げ出すと、手にしていた紙袋の中身を取り出した。
布地にくるまれた小さな物体。
それをエドガーは丁寧に開いていく。露になっていく物体の正体、それは……
「はぁ……リディア。どうしてきみは僕を最優先にしてくれないんだろう。お仕事お仕事って。僕は寂しいよ、ねえ、リディアぁ〜」
リディアそっくりに作られたミニチュアの人形であった。
金緑の瞳、陽の光に輝くキャラメル色の髪。何から何まで精巧に作られたリディア人形を前にし、エドガーは尚も自分の想いを伝えだした。
「僕はきみに愛を全身で注がないと生きていけない。リディア、僕を見捨てないでくれぇ!!」
「………」
エドガーが幾ら愛を告白しても、人形のリディアはその顔に笑みを表したまま、変わらずエドガーを見つめている。
「リディア、リディア、愛しているんだ!!んーっ」
相手が人形だと認識しているか否か、エドガーはおもむろにリディア人形の唇…顔全体にキスをし始めた。

「エドガー、さっきは冷たく言い過ぎたわ。ごめんなさ……」


そこへ仕事の合間を縫ってやってきた本物のリディアが、唖然とした表情で彼の姿を金緑の瞳で凝視していたことに、彼自身全く気づいてないのだった。












〜fin〜
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ