□07:邂逅
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はぁ、とマルコはため息をそっとついた。

すっかりとは言わないまでもそれなりに皆の修理で直った船の上で、必要な鍛錬だの掃除だのが終わった昼下がりは各自好きなことをして過ごす時間だ。
なんだかんだマルコが他人に感化するのは珍しいからか、芙蓉の周囲にはいつもクルーがいて次第にその人となりに接するうちに仲良くなった者もいるようで、船の上はまさに穏やかなものだった。

そんな中、自分の気持ちとやらを再確認どころかようやく認めたマルコからしてみれば晴れやかな気分にもなれるものだがそうなった途端同じ部屋に好いた女がいるというのは生殺しであることに気がついた。
淡白なほうだと自覚があるにしろ、彼にしてもこれはナイ、とため息一つこぼしたくなるのはしょうがないというものだ。


「マルコさん、どうかしたんですか?」
「ん。ああ…いや今朝は夢見が珍しくよくなくてねい」
「そうなんですか」


心配そうに尋ねられてもまさか『フヨウを抱く夢を見て起きたら生殺し気分だった』などと言えるわけもなく。
マルコは乾いた笑みを一つ浮かべ、大丈夫だ、と彼女を安心させる。
折角嵐も無くこのまま順調に進めば合流なのだから一緒の時間を楽しまない手はないのだ。


「船旅はどうだい」
「ええ、船酔いもまったくなく」
「ははッ、そりゃあ良かったよい」
「そういえば、先程騒がしかったけど何かあったのか――」


芙蓉が首を傾げながら、目を丸く見開く。
その視線が自分よりも向こうと気づいたマルコが振り向くとそこには見知った顔が駆けてくるのが見えた。


「マルコおおぉぉぉぉオ!!!」


ぎょ、とマルコが目を見開くと同時に衝撃が訪れる。
どさガツン、と激しい音を立てながら倒れる彼に思わず芙蓉はしゃがみこんでマルコを見遣った。


「……あの、」
「マルコ、マルコ、無事だっだんだなあ゙あ゙ぁ゙ァ゙!」
「…ッの、サッ…」
「マルコさん?」
「このバカサッチ、さっさとどきやがれ!」


ぶわ、とマルコに覆いかぶさるようにむせび泣いていた男が宙に舞うかのように蹴り上げられ、更に蹴り飛ばされたのを見て芙蓉は更に目を丸くしたのだった。
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