□10:まるでそれは
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まるでそれは、決まっていた物事のように。
まるでそれは、パズルの最後のピースで。


まるでそれは、当たり前の風景。


「フヨウちゃーん!」
「あらサッチさん」
「ちょっとサッチ隊長またフヨウさんに迷惑かけてるんですか!」
「えー!? お前らオレをどんな目で見てんだコラァァ!!」


大渦蜘蛛海賊団の船の上で、4番隊のメンバーと一緒に現れたサッチが芙蓉の姿を見つけて駆け寄ろうとすれば、それを隊員が咎める。
彼女のその横ではスクアードとマルコが海図を片手に何かを話し合っていた様子なのは一目瞭然である。

少し離れた所ではビスタたちも何か作業していた、それは穏やかな日。


「おめぇら少しはスクアードに遠慮しろよい!」
「カッカッ、気にしちゃいねぇーよ」
「すまないねぃ」
「賑やかですねえ」
「あれは煩い、っていうんだよい」


最初はサッチ同様その存在を危ぶんでいた隊員たちも、むしろ隊長が迷惑かけたんじゃ、と視線を変えた途端色々と彼女に気を使うようになった。
それはやはりマルコの芙蓉への態度が一番の要因だったのもあるけれども。


それはそっと彼女のそばで笑うマルコだったり(あんな穏やかな笑みは古参でさえ殆ど見たことが無い)。
彼女が困っていれば甲斐甲斐しく手伝いにいってしまったり(そうして手を出しすぎて怒られているのだ、あの1番隊長が!)。
そして不思議な芙蓉という女性が、自分たちにまで当たり前のように優しいことも最初は媚びかと思ったが、彼女自身が当然のようにしているのだ、と大渦蜘蛛海賊の連中とも話して理解できたときには。


その頃には彼らの隊長サッチがいつもの調子で彼女にベタベタしてはマルコに蹴り飛ばされる日常が来ていて。
嗚呼。申し訳ねぇなーなんてことに変化した、という次第だ。
おまえらオレに対して酷くねぇか! という抗議はこの際聞こえなかったことにしておくスキルは4番隊ならではだろう。

ビスタはそれらを眺めるのが楽しいらしく、けしかけることも無かったが止める様子も無い。
そんな兄弟たちに、マルコだけが呆れて大きく溜息を吐き出すのだ。
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