□12:スノーフレークの君。
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船上もそうだったが船内もまるでお祭り騒ぎ。
それはマルコの帰参とスクアードの挨拶、両方から来る宴への予兆。
何はともあれめでたいのだ、というその楽しそうで嬉しいそうで、そんな賑わった雰囲気はただ歩くだけのジョズと芙蓉の気持ちも和ませ、また高揚させた。


「すまんな、騒がしくて」
「いえ……皆さん、喜んでらっしゃるんですね」
「ああ、マルコは…大事な、家族だからな」
「ステキだと思うわ」
「……そう思ってくれるか?」
「え?」
「お前さんからしたら、オヤジが、その」
「……私、ずっとジョズさんのことも聞いていて知っているんですよ」
「?!」


ふうわりと微笑むように笑った彼女は、本当に嬉しそうだった。
それはどういう意味での嬉しさなのか、ジョズにはわからなくて思わず足を止める。
広めの廊下の端だ、誰もが浮き足立って二人の横を通り過ぎていく。
中には二人の仲を勘ぐって囃し立てる者もいたが、すぐに芙蓉がマルコの連れだと気がつくとジョズに詫びて去っていく。


「マルコさんが、とても信頼している人」
「………!」
「私がまだ誰が父親かなんて知らなかったときに、マルコさんから色々聞いて――ジョズさんは、頼りになる兄弟だって」
「そ、うか」
「そしてそんな人たちが、愛してやまない『父親』が羨ましくもありました」
「………」
「だから」


にこり、と笑った笑顔は、やはり本当に嬉しそうな笑顔。
その意味がようやくわかったジョズは、同じようにゆるゆると上がる口角を隠せずにいた。


「あの人が父親だということは、私にとってとても嬉しくて、誇らしい」


それは、この船の誰もが白ひげに抱く気持ちだったけれど。
ずっとずっと離れて暮らしていた(らしい)彼女から聞くと、彼としても誇らしかった。


「あんたはなんでオヤジと離れてたんだ?」
「うんと……マルコさんからは何て私のこと聞いてます?」
「恩人だと」
「それだけですか?」
「ああ」
「そうですか……」
「ここが食堂だ」
「わぁ広い」
「少し休憩がてら此処で飲み物でも要るか?」
「ありがとうございます」


甲板から食堂までの距離は、それなりにあった。
ジョズとしては足を引きずっている彼女の体調も気になったので休憩を持ちかけたのだが芙蓉もすぐさま理解したらしく笑顔でその提案を受け入れた。


「サッチ」
「おうジョズ! フヨウちゃんも!」
「悪いがなんか飲みモンくれねぇか」
「ん、フヨウちゃんにか?」
「ああ、甲板からここまで歩いてきたしオヤジとの対面でも疲れたようだしな」


それに、とジョズは視線を廊下の方へと向ける。


「浮かれた連中がああもうろついてちゃ落ち着いて案内もできやしねえ」
「はははっ、そうだろうな!」
「マルコはオヤジと今ちょいと話をしてる」
「そうか、はいっフヨウちゃんには俺特製トロピカルジュースだ!」
「まぁ綺麗!」
「へへん、俺の自信作だぜ! なんせこれにはキミへの愛が」
「ちょっと隊長フヨウさんにまた迷惑かけたりしてませんよね大丈夫ですよねあとでマルコ隊長に蹴り飛ばされても知りませんよ!」


他のテーブルに座っていた4番隊の隊員らしい何名かが慌てたように立ち上がって大声でサッチに抗議するのを受けてサッチが「お前ら俺をなんだと思ってんの? 野獣か! 野獣か!?」と逆に抗議する様にフヨウはクスクスと笑った。
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