□01:ようこそ、
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「いつでも、話し相手になるよい」


お前が俺にしてくれたように、とマルコは声に出さず付け加える。
芙蓉はそれに気づくこともなく、ただ淡く微笑んでいた。


「あ、――マルコ、さん」


不意に海を見遣った芙蓉が、男の名前を強く呼んだ。
その声に導かれるようにマルコも視線を巡らせれば、水平線に見えたのは確かに船。
こちらに向かっているわけではなさそうだが、救いかそれとも――少し迷ってマルコはぐい、と芙蓉の手を引いた。


「隠れてろい、俺が見てくる。――海軍なら撒いてくる」
「マルコさん……」
「大丈夫だい」


青い炎は、空にも海にも負けることのない強い色を放って。
そんな彼を、芙蓉は木の影からそっと目を細めて見送ったのだった。




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