□03:揺れる気持ち
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マルコが戻ると、スクアードと芙蓉が割とにこやかに会話していたようで小さく安堵のため息を吐き出した。
自分も言えたことではないが、スクアードにしろクルーにしろ海賊らしい風貌の荒くれ者だらけで普通は敬遠されるほうだ。
なるべく一般人に迷惑をかけないのが白ひげの中での暗黙のルールだが、そこだけはどうしようもない。


(……まあ、俺を可愛い扱いする女だし問題ないだろうけどねい)
「おゥ、いつまでそこに突っ立ってんだ」
「あ? いや、ちょいと考え事しちまっただけだよい」
「おかえりなさい」
「…ああ、ただいま」


彼女の言葉に緩む頬。
それをみてスクアードが笑った。


「二人の部屋は一緒でいいかもしれねぇが、あんまり熱くは遠慮してくれよ!」
「スクアード!」
「クカカ、それで向こうさんはどうするって?」
「……全速力でこっちくるってよい」
「そうか」
「航海士とも話したが、どんなに早くても会えるのは3、4日はかかりそうだよい」
「まあその程度で済んで良かったじゃねえか」
「まあねい」
「今はフヨウにオヤっさんの話をしてたところよォ」
「親父の?」


視線を彼女に向ければ、やんわりと笑みが返される。
マルコは芙蓉の近くにあった椅子に腰掛けて、差し出された酒のボトルに無造作な仕種で呷った。


「ああ、俺がゴールド・ロジャーに仲間を殺されて一人になったあと拾われて今に至るまで面倒見てくれた親父なのだとな!」
「……そうかい」


芙蓉は少しだけ、何かを言いかけて笑みの中にそれを押し込めた。
それにマルコは気づいてどうしたものか、と軽く首を傾げた。


「スクアード、とりあえずフヨウを休ませてやりてえんだがよい」
「一緒の部屋でいいのか?」
「そうしてくれ――信頼してねえわけじゃねえよい」


何やら含みをもった笑いに眉を潜めたが、空いている部屋の場所を告げられたマルコは軽く礼を言うとさっさと芙蓉の手をとって立たせる。
驚く彼女をよそに、あっさりとスクアードも手を振って新しい酒瓶に手を伸ばしていた。
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