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□05:吐息
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「勘違いすんじゃねェぞ、か弱いからって悪いこっちゃねえ」
「……足手まといになるのが、辛いですが」
「だがお前さんは、不死鳥にあんなに人間くさい表情をさせれる――そいつぁ、ちょいと自慢していいぜ」
「そ、うかしら」
「前にも言ったろう、アイツはイイヤツだが冷めてる」
古株の家族やオヤっさんなら違うだろうが、と付け足してスクアードは笑った。
「白ひげの1番隊長は重い」
「………」
「だがあんたのそばは、あいつにとっちゃ寛げるトコなんだろうよ」
「マルコさんは」
苦笑するように芙蓉が口を開き、スクアードから視線をまた太陽に戻す。
刹那の金色はもう普段の海の彩りに戻っていて、ただ朝の静けさだけだった。
「少し…いえ大分、真面目だから」
「うん?」
「私が『話さなければならないこと』を知ったら、態度に違いがでそうでいやだなとか」
「………」
「ふふ、ごめんなさい」
「フヨウ、…あいつはイイ男だぞ」
「そうですね」
「話してみる価値はあるんじゃねえか、なんだかはわからねエが」
「………」
ふわり。
芙蓉は笑みを浮かべて、スクアードを見た。
蜂蜜色が柔らかく細められる様は、どこか懐かしさすら感じるほどで。
「寒くなってきましたし、私は中に戻りますね」
「ああ…今頃、不死鳥が探してるんじゃないか」
「どうでしょう、ぐっすり寝てましたからねえ」
あっさりという形容が合うくらいあっさりと彼女は海から視線を外し、スクアードを振り返ることなく船へと足を運んだ。
そして与えられた部屋の前まで進んだところで足を止め、中の気配に知らず知らず深呼吸をしていた。
カチャリ、とドアノブを軽く捻り、足を踏み入れる。
静かな青がひたりと彼女を見据えていることに、閉まったドアを背にした芙蓉が小さく息を呑む。
「…おはよう、マルコさん」
「ああ、おはよう」
ベッドに腰かけて寛いだ様子のマルコは芙蓉を軽く手招きした。
それに操られるようにふらりと歩みを寄せた彼女の頬に武骨な手が触れた。
「冷えてる」
「…風に、あたって…」
「風邪ひくよい」
「………」