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□06:人生論
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スクアードは女性を大事に、という男ではない。
もちろん乱暴に扱ったりするわけではないが、陸で娼婦を買うことはあっても特定の女に入れあげる若造でもないのだ。
ただ、時折芙蓉から感じる『何か』がじれったさにも似た気持ちで背中を押すのだ。
「さっさとモノにしちまえ」
「………」
「どうした、女を知らないガキじゃあるまい」
「フヨウは大切だ、だがそれがオンナかと問われりゃまだわからねえよい」
「ああ?」
マルコは苦い面持ちで、ふるりと首を左右に振った。
「ガキじゃねえからこそ、いろいろ考えるってもんだ」
「なんだ、年寄りくせえ」
「人をガキだの年寄りだの、お前こそいつからそんな世話やきになったんだよい!」
お互いを探るように軽く言い合いをして、互いに沈黙する。
そしてマルコは徐に口を開いた。
「フヨウが、オヤジの実の娘だとしたら、あんたはどう思う?」
「オヤっさんの?」
「……ああ」
ふぅん、と気のない返事のような声を発してスクアードはマルコを鋭く見つめた。
マルコもまた、静かに見返した。
それで納得がいったのか、男は苦笑を浮かべた。
「そいつぁ、大した問題だが――不死鳥、お前の問題とはまた別じゃねえか」
「なんでだよい」
「確かにオヤっさんは、俺達にとって特別だ」
だからこそ、その娘となれば立場は微妙だろう。
だがマルコと芙蓉の関係に影を落とすものではけしてないのだ。
スクアードは顎を軽く撫でて、笑った。
「どこぞの馬の骨に盗られるよりゃぁ自慢の息子のそばにいてくれたほうがオヤっさんも喜ぶだろうよ!」
「……そんな単純じゃねえだろよい」
「じゃあなんだってんだ」
そう問われれば、マルコは言葉に詰まった。
マルコにとって白ひげを海賊王にすることが夢なのだ、その娘は守るべき宝で、比類なきものだ。
ただの女なだけでない、『白ひげの娘』である芙蓉のすべてを引き受けるとは簡単にはいかないのだ。
「あれがただの女なら、俺の部屋にしまいこみゃ済むけどよい」
「お前、あの嬢ちゃんがそんなタマだと思ってるのか?」
「………」