□06:人生論
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か弱くて、脆くて、温かくて。
守ると確かに決めた女をマルコは今、どうしていいかわからずに口をへの字に曲げた。

ただそばにいてくれればいい、それだけで連れてきた。
だがそこに白ひげの存在が絡めば、そうはいかない。

それでも、手放せはしない。


「………」
「お前、バカだなあ」
「…何を言ってるんだよい」
「ベタボレだって顔に出てるのに、認めちまえばあとは楽じゃねーか」
「………」


共に肩を並べてグランドラインが見たかった。


「オヤジは、どう思うかねい」
「娘が幸せで、息子も幸せなら言うこたねえんじゃねえか?」


どんな災厄からも守りたいと。
自分が幸せを運んだと笑った彼女をそばにと。


「……ああ、もう言い逃れはできねえんだねい」
「腹括るか?」
「まあ、しばらくは縛りつけねえよい」


白ひげから愛娘を奪う海賊、それも悪くないか、とマルコは呟いた。


「あいつがこれからモビーで暮らして、それでもまだ俺が依存先ならもう遠慮はしないよい」


スクアードは苦笑して、とん、と酒の瓶を置いた。
そして一つ、昔話をマルコに聞かせる。


「オヤっさんが言ってたのよォ」


広い世界で、ただ一人。
手に入れたい女がいる。
そいつを忘れるなんてない。


「その女ってなあ、話の流れからしたらフヨウのお袋さんだろうな」
「…そうだねい」
「息子のテメエも惚れるんだから、結局はオヤジと似た親子だよ」
「スクアード」


不器用な慰めなのか。
ガツン、と酒瓶が鈍い音をたててぶつかり合った。
マルコはぐびり、と一口含み。


ゆるり、と笑って。


「世話ぁ、なった」
「二度はねェな」
「それにしてもあんたがフヨウに優しくってのは意外だねい」
「…なに、ちょいと気に入っただけだ」


せいぜい大事にしてやんな、と笑う男にマルコは軽く手を挙げて部屋をあとにした。


コツ、コツ。
足音が妙に響く中、クルーたちは船の修理に追われて船室は静かなものだった。


「フヨウ」
「…マルコさん」
「調子はどうだい」
「ええ、大分」
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