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□09:花
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海の女神、海の魔女。
あの海兵を突き落とそうとした芙蓉の姿に、マルコは見た。
見えたわけではなく、ただそう感じただけかもしれない。
ただ確かにその存在に戦慄を覚えた。
恐らく――サッチやビスタ、スクアードは同じように感じただろう。
最も傍にいたあの海兵も下手すれば感知していたはずだ。
(もしカリプソーの存在を、海兵が利用しようとしたら?)
(逆に疎ましいとしたら?)
次々に浮かぶ疑問。
白ひげの娘、それだけでは済まない事実だ。
エドワード・ニューゲートの娘であることはマルコとしては隠して欲しくはないが、カリプソーのことは推し量れない。
(……これは何か、講じないと、ねい)
「マルコさん?」
「そいつぁ、あの爺さんの特製カフェオレなんだってよい」
「えっ?」
「美味いかい」
「―…ええ、美味しいわ」
苦笑にも似た女の笑みに、下手な話題逸らしを受け入れてくれたのだとマルコはブラックコーヒーを飲みながら目を和ませたのだった。
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