□10:まるでそれは
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そんな中、海軍の邪魔だとか嵐の予兆だとか、他の海賊と戦うハメになったりだとか。

まぁそんなコトが白ひげ海賊団側も、大渦蜘蛛海賊団にも起きてしまって未だ両海賊団出会えていない。
それどころかとりあえず食料だとか衣服だとか、最低限調達すべきだと判断したスクアードとそれに賛同したマルコとで今、丁度イイ島を見定めてそれに対する海路を決めていたところだ。

もちろんそこに芙蓉が同席する必要はなかったが、二人がかまわないと言ったことと好奇心もあってそこに居た。
二人の会話の半分も理解は出来なかったが――海に対する知識もだが、グランドラインならではといった会話も多々含まれていたから――彼女は楽しかった。


「よっしゃ、それじゃぁそれでいいか」
「ああ、大丈夫だろい」
「まぁ安全を考えたら嬢ちゃんは船を降りねぇほうがいいな」
「……そうですか」


幾分か肩を落とした彼女は曖昧に笑ったが、スクアードが慰めるように陸の女に言ってお前さんの服を用意させるからと告げられればありがとう、と微笑んだ。


「よっしゃヤロウども! 島に向かうぞ!」
「おお!」


号令に対して怒号が返る。
その中に幾分か喜色が含まれていて、マルコと芙蓉は顔を見合わせて笑った。


「スクアードさん、なんていって私の服用意させるのかしら」
「さぁねい」
「私も上陸してみたかった」
「そのうちな」
「そのうちね」


くすくす笑いあう二人に、周りも「嬢ちゃん残念だったなあ」とか「オヤっさんの管轄の島なら大丈夫だ」だとか声がかかる。
潮風が吹き付ける甲板で、海賊船には似合わないほど穏やかな笑みを向ける女を囲むようにして、強面の男たちが穏やかに笑いあう。

それは、本当に穏やかな日。


「今日は日差しも穏やかね」
「そうだねい、……フヨウ」
「はい?」
「ちょいと、膝ぁ借りるよい」
「ええどうぞ」


ごろり、とマルコが座る彼女に頭を預けて横になる。
別段眠かったわけでも疲れていたわけでもないがそうするとひどく落ち着いたからだ。

傍目から見れば二人は恋人で、その落ち着きすぎから夫婦にすら見えたけれどもそれを見守るサッチとビスタは苦笑せざるを得ない。


「あれであの二人、恋人じゃねぇってんだからどうなってんだろうなあ」
「まぁマルコのやつあれで手を出してないというから無自覚なんだろうが」
「フヨウちゃんも嫌がるでも恥ずかしがるでもないしなぁ」
「そこは大人の女性だからだろう」
「どうなんだかねぇあの二人」
「さてな。あの二人は、あの二人以上でも以下でもないんだろう」
「まぁた難しいこと言っちゃって」
「ふっふっ」


それじゃぁ二人にしてやろう。
サッチはそうビスタにだけ聞こえるように囁いて、くるりと甲板に背を向ける。
そう言いながら喉が乾いて戻ってきた二人に何か飲み物を用意しに行くに違いないとビスタは声を出さずに笑って、その背中を追った。
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