□10:まるでそれは
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スクアードたちが上陸した後も、マルコとフヨウは部屋に居た。
料理番である老人もサッチも上陸して、明日の朝まで帰ってこない。

ビスタや白ひげの隊員たちも、短い上陸を楽しみに行ったらしい。


「皆が皆楽しみにいっちまって船はどうするってんだよい」
「ふふ、マルコさん押し付けられちゃいましたねえ」
「一人で全部守れたぁヒデェやつらだ」


二人で囲む食卓は、見慣れた光景で――見慣れない光景。


「広い食堂で二人っていうのは中々寂しいですね」
「いつもはうるさいくらいだからよい」
「私も久々に料理した気分です」
「いつもじいさん手伝ってるだろい」
「お手伝いは料理したって気分にはなりませんよ」
「そういうもんかい?」
「ええ」


時折、波に揺られて船が軋む。
その音すらも、穏やかで。

遠くからは町の賑わいが風に乗って聞こえる。


二人の夜は、穏やかだった。


「覚悟は決まったかい」
「……名乗る覚悟なら、まだ」
「そうか」
「ごめんなさい」
「いやいいさ」
「隠しておけることでもないし、だからって話すべきかもまだわからない」
「そんな難しいもんかねい」
「私にはね」


時折、大切な話を交えて。
そうして他愛の無い話を続けて。

僅かに触れた指先からの熱を、どちらも感情を隠して伝えずに。


そうして、いつものように過ごした二人が翌朝目にしたものは。


きらびやかな服と装飾品、果物の山。


「わぁ実用性はどこに……」
「いや女モノって頼んだらよゥ、こうなっちまって」
「サッチ、なんだよいコレ」
「いやフヨウちゃん好きかなーって俺買ってたらさぁ爺さんとか他のクルーとかも買ってきちゃってて」


慌てる男たちに、ため息をつくマルコに、目を瞬かせたフヨウがくすり、と笑って。
次第にその笑いはそこを中心に、船に広がる。


「さあ出航だ!」
「今度こそ、オヤっさんと合流するぞ!」
「「「オオ!」」」


その後芙蓉がドレスやらワンピースやらの中からセクシー衣装を見つけて困るのは、また別の話である。


(ど…どこに隠そう?!)



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