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□12:スノーフレークの君。
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「実の娘とやらがこんなにひ弱くてがっかりしました?」
「えっ」
あっさりとそんな彼らの思惑を知ってか知らずか芙蓉が微笑んでそういった。
確かに細く、弱弱しい。
だがそれはがっかりする要素だったろうか、とジョズは少し考えて首を振った。
「いいや、俺は……今のお前は嫌いじゃない」
「私もよ?」
「ありがとうございます」
マルコがあそこまで入れ込んでいる女性、それにはきっと理由がある、とジョズは思う。
その理由は彼には今すぐにはわからないが、にっこりと自分たちに微笑みかけてくるその姿は理由の一つのようにも思えたのだった。
「さぁ、外が少し静かになった――案内を続けるか」
「はい、お願いします」
「それではな、シャーロット」
「ええ」
二人が姿を消した食堂室で、少しだけ呆然とその去った方向を見つめているシャーロットにサッチが近寄った。
「彼女は覚悟を決めて、マルコのそばからこの白ひげの船に来たんだぜ」
「覚悟?」
「そ……まぁその内容は俺が言うべきじゃあないけどな!」
ハハハッ、と快活に笑ってサッチが去っていくのをシャーロットは見送って、朱に彩られた唇を笑みの形に変える。
「ステキじゃない」
スノーフレークのように可憐な小さな花と思ったけれど、と呟く。
どうやら白ひげの船に、また楽しいことが増えるのだ、とシャーロットが笑って食堂をあとにしたのだった。
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