□18:その存在、
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「デルフィニウム、黙りなさい!」
「グララララ、キャリーかまわねえよ」
「でも船長……」
「とりあえず、ナースたちは全員下がってろ」
「え?!」


これにはデルフィニウムとキャリーを含め、ナースたちが全員驚いた声を上げた。
ただ一人、シャーロットだけが「わかりました」とあっさりと頷いて踵を返す。


「婦長?!」
「船長が下がれと言ったのです、貴女たちもさっさとしなさい」
「……ッ、は、い」
「フヨウ、またあとでね、具合が悪くなったら早く言うのよ!」
「ありがとう、キャリー」


ぱたぱたと去るナースたちの中で、悔しそうな顔を見せて最後にもう一度デルフィニウムは芙蓉を睨みつけていた。
そしてそんな彼女の背中を押すようにしてキャリーが去っていく。
それらを見送ってから、白ひげは楽しそうに笑ったのだった。


「大活躍だったそうだなァ、ん?」
「……私、じゃないわ」
「あぁ?」
「私も確かに、いたけれど」


それは答えにならない答え。
それ以上は言わずに口をつぐんだ彼女に、何かを察したのであろう白ひげはぐびりと再び樽を傾けて酒を飲んだのだった。


「私の力ではないその力を使い続ければ、私は人ではなくなってしまう」
「……?!」


ぽつりと唐突に零された言葉に、マルコが弾けるように隣に佇む芙蓉を見る。
ジョズもそうだ、何を言われたのかよく理解できない、そういった表情で彼女を見ていた。


「私はただの人だけれど、あの人の魂を継いでもいる」
「海こそは母、か」
「………」
「まぁいい、その力に頼ることもねぇだろうよ!」


グララララ、と再び高らかに笑った父親の姿に、ようやく芙蓉も笑みを浮かべたのだった。
だがマルコとジョズは視線を交わし、それだけでは今後済まないであろう予感をどちらからともなく感じてため息を吐き出したのだった。
その意味はそれぞれに異なっていたであろうけれども。



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