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□猫になった恋人
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何日ぶりの雨だろうか。
あまり雨の降らないこの時期。雨の降る梅雨の時期よりも憂鬱に感じるのは自分だけだろうか。と、窓からぼんやりと雨を眺める太子はそう思った。
「お〜寒い寒い。そろそろ閉めるか…。」
はぁと白い息を一息吐いてから窓を閉めた。
すると、閉めるのとほぼ同時に、ドアを強くノックする音が鳴った。
「誰〜?『太子!太子ぃ!』
「…妹子?」
妹子は、太子の恋人である。
大人しい性格の妹子が、こんな野蛮なノックをするわけがなく、何かあったに違いないと、太子は急いで玄関へと向かった。
『太子ぃ〜!早く開けて下さい〜!!』
「ちょっ、待ってろ!よいしょっと…」
玄関に散らばる靴を足で一ヶ所に集めて、ドアを開けた。
「太子ぃ〜!!!」
「のわっ!」
ドアを開けると
一匹の真っ白な猫が、太子に飛び付いてきた。
「え?え?猫?」
「太子!僕です!妹子です!」
猫が喋ってる。
明らかに猫だ。
でも妹子だと言っている。
「僕…猫になっちゃったんです!!」
猫になった恋人
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