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□願うは君の幸せを
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拙者は 弱い。
主君を守ることができなかった。
家康様
拙者はどうすれば―
願うは君の幸せを
家康が亡くなって、三日が過ぎた。
側近である半蔵は、心を失ったようにただ横になっていた。
「…半蔵様…」
使いの者が声をかけるが、ぴくりとも動かない。
「…今日もこちらに食事を置いておきますね。」
三日間、使いが半蔵に食事を持ってきていたが、置いた場所から動いておらず、そのままの姿で置かれている。
「半蔵様…三日も物を口にしていないと、お体を壊してしまいます。どうか、お食べ下さい…」
そう言って、使いの者は、そっと襖を閉めた。
暫くすると、雨の音が聞こえてきた。
三日前、家康が亡くなった日も雨だった。
半蔵は窓の外に目を向ける。
なぜ、守れなかったのか。
なぜ…
「くそ…っ!」
ギリ と歯を噛み締める。
何度も何度も『あの日』のことを思い出したが、答えが出ることはなかった。
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