金色のガッシュ

□愛の言霊
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「好きだ」も「愛してる」も、清麿は信じない。
私はこんなに真剣なのに、清麿は困ったような呆れたような微笑を浮かべるだけだ。

「清麿ー」
「なんだ」
「好きなのだ」
「はいはい」
「愛しておるぞー」

ドラマの中でのこの言葉は、大切で重要なフレーズだった。

ついさっきも母上殿は、低い声で「愛」を囁く場面を見てはうっとりと「ロマンチックねぇ…ガッシュちゃん」と呟く。
そのとき画面で頬を染めていた黒髪の女の人は、意志の強そうな眉や、つり目気味な目元が少し、ほんの少しだけ清麿に似ている気がした。
だから私は画面を見ていられなくて、モヤモヤした気持ちを抱えて清麿のもとに帰ってきたのだ。

「きーよーまーろ」
「だああっ、下でお袋とテレビでも見てろって!ここに居ても俺は構ってやれないぞ!」

ベッドに座って、勉強机にかじりつく清麿に絶えずちょっかいをかけていたら結局怒られてしまう。
やっと参考書から顔を上げて、振り向いたその顔はいつもの清麿。やはり頬など染まっているはずはなかった。(怒鳴ったせいで多少紅潮しているが)

「清麿は照れぬの」
「はあ?」
「私がお主に愛の告白をしても、お主は照れぬ」
「当たり前だろっ」

清麿は、男は男に告白しないんだよ、とかガッシュもドラマの見過ぎだとか文句を垂れる。また勉強に戻ろうとする後ろ姿に、勢いよく抱きついてみた。

「うわ!?」

ガタンと椅子のバランスが崩れるも、また持ち直す。
清麿の背後。背もたれが邪魔だが、後ろから首に手を回してしがみつくことができた。


伝えたい。
伝えたい。
見たい。

お主の可愛い顔が、見たい。

フッと、耳元で息を吹き込むように囁いた。できるだけ低い声で、小さく、はっきりと。

「好き」も「愛してる」も信じてくれないなら、この二文字に全てを込めるだけ。
愛しい想いと、親愛と、少しの独占欲を込めて呼ぶ。
彼の名前を呼ぶ。


「清麿」


「好き」も「愛してる」も「ずっと一緒にいたい」も、「ありがとう」も。

いつか気付いてくれればいい。
それまでは1日に何度でも、飽きずに告白し続けるのだから。




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