金色のガッシュ

□返却期限
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ガ清前提清+フォル
ファウード後あたり



フォルゴレは仕事用の分厚い手帳を片手に、何やら電話で打ち合わせをしているようだった。

イタリア語だから内容はあまり分からないが、また大きなコンサートがあるようだ。
世界的大スター…なんだよな。一応は。

事実とのギャップが大きすぎて実感はわかないが、恵さんといいフォルゴレといい、俺はすごい芸能人を家に招いているのだなぁ…と他人事のように思う。

キャンチョメはガッシュと公園に遊びにいってしまったし、特にすることもない保護者二人は部屋でゆっくりと茶を飲んでいたのだ。
フォルゴレが通話中のため若干暇な俺は、手帳から滑り落ちた一枚の紙切れにすぐに気づいた。
大きさや厚みからいって、写真のようだ。

それを興味本位で手にとってしまったのだが…。

「え…これって、まさかフォルゴレか?」

写真を見て、俺は絶句した。

同時に、いつものふざけた格好とふざけた歌とダンス、情けない姿が走馬灯のように頭を駆け巡る。

「ん?何を見てるんだ清麿」
「いや…、」

電話を切ったフォルゴレに後ろから声を掛けられて、思わず肩が跳ねた。

勝手に盗み見た罪悪感から目線を下に落とすと、フォルゴレは納得したように軽く笑う。

「ああ、見つかってしまったようだな」


写真のフォルゴレは、レンズを睨みつけるようにして立っていた。服装だって、お馴染みのものではない。
全体的にピリピリした雰囲気を纏っていて、髪型もファッションもらしくないように見えた。

特に目が。
いつもキャンチョメを見守る優しげな色は欠片もなく、酷く孤独さを感じた。


「君は昔の自分と、今の自分のどっちが好きかい」
「そんなのっ」

今に決まってる。
昔の俺はホントに嫌な奴で、人を嫌って、人に理解されることを望んで、そのくせ自分からは何も動かなかった。
毎日、夜が明けることが嫌で、暗い部屋に閉じこもっていた。



でもガッシュが来てから、俺は変われた。
変わることができた。


「清麿は、ガッシュで変われたんだな」
「……ああ」
「私もそうだ。キャンチョメで変われた」

格好よくキメて、クールで、力があった過去の自分より…。
今の自分の方が気に入っているんだ。

「この写真はその戒めだよ」
「戒め…」
「ああ」

フォルゴレはゆっくりとした動作で俺の手から写真を抜き取ると、大切そうに手帳に挟み込んだ。

「こんなに私を変えてくれたキャンチョメに何かを返したい。だから私は戦うんだ」

君も、そうだろう?
目でそう訪ねられた気がした。

思わず頷くと、頭に温かな感触。

いつもなら振り払うけれど、今日はそれが出来なかった。




「私たちは、あの子たちにどれくらい返せたのだろうな?」


明確な答えは出ない。

俺は唐突に、今すぐにガッシュに会いたくなってしまった。







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