メジャー短編1

□気づけよバカ
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気になるアイツの視線の先にはいつもあのおっさんがいた。







「茂野先輩ってかっこいいなー」



先生が急用とかで自習時間となったこの時間。当然授業中とは思えないくらい騒がしい。


私も真面目に勉強する気になんてなれなくて、窓の外をぼーっと見てまったりと過ごすことにした。



グラウンドに目を向けると三年の男子が体育の授業で走っているのが見える。



他の生徒がヒィヒィいいながら走っている中、茂野先輩は一人涼しい顔をしていた。



《野球部の無かった聖秀に一から野球部を作ったんだよ!》
《イケメンで野球も上手くてあの海堂高校を倒すんだって!》



最初に聞いた時は今時そんな凄い人なんて・・・と思っていたけど遠くから見る先輩は、本当に格好よくて、只の噂なんかじゃないんだと思わせてくれるから不思議だ。



「やっぱりスポーツマンはいいなー」



「俺も一応スポーツマンというやつなんだけど」



―ビクっ



急に話しかけてきたのはクラスメートの清水大河。



こんな騒がしい中、私の呟きなんて誰も聞いてるわけがないと思っていたのに。



そういえば最近やたらこういうことが多い気がする。



「ね、清水くんも野球部だっけ?」



「そーだけど。なに、お前茂野先輩のこと好きなの?」



「えっ///!好きとかじゃなくて・・憧れっていうかー、目で追っちゃうっていうかー」



「それって好きってことなんじゃねーの?」



「ええっ、そ、そうなのかなー。でも喋ったこともないし・・・でもね、よく通る声は遠くにいても分かるよ・・・部活の時屋上から聞こえてくるんだぁ」



きゃーっと一人浮かれている私に大河は冷めたような面白くないような目で見る。



「・・・なに?バカなやつだなーとか思ってんでしょー」



「・・・別にバカとか思ってねーし。ってかちょっと分かるし・・そーゆーの・・」



「え?清水君も茂野先輩が好きなの??」



「はぁ〜??なんでそーなんだよ。そんなわけねーじゃん。分かるってゆーのは・・目で追ったりとか・・・どこにいても声がわかるとか・・・雑音の中でどんな小さな声でも・・・」



ごにょごにょと最後の方は何を言っているのか分からなかった。


「どうしたの?顔赤いよ?」



覗き込む私に気づき、弾かれるように顔を逸らす。



「べ、べつに赤くねーし!」



明後日の方向を向いて言うが耳が赤いことまでは隠せない。



「ま、いいけど。清水君でもそんな風に思うことあるんだねー」



「でも、ってなんだよでも、ってι・・・はぁ・・・(鈍い奴だなー・・)」



「けど清水君にそんな風に想われる子って幸せだね。清水君ってぶっきらぼうだけど結構優しいもん。何気に女子に人気あるんだよ〜。ねぇねぇ、それって私の知ってる人?」



「///っ!・・ιι(お前だっつーの!)ああ、めちゃくちゃ知ってる人だよ・・」



その愛しい人の顔を浮かべているのだろうか、目を細めて幸せそうな、でも切ない表情を見せた。



「だから誰よーっ」



全然分からないから教えてよ、という私に清水君は何故か気を悪くしたのかムスっと口を尖らせると、



「まー、じっくり考えてみてくれたまえ」



くるっと私に背を向け、手をヒラヒラさせて教室から出て行った。



「っもう、何よー。気になるじゃんっ!っていうかまだ授業中ーっ!」



連れ戻しに私も教室を飛び出した。
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