メジャー短編1

□寿誕『今日という日が』
3ページ/5ページ





気まずい空気が充満する中、無駄に流れるテレビの音がやけに耳障りだったが、気にしていない振りをして教科書を捲る。




(ちっとも頭に入らない・・)




さっきから同じところを何度も読んでいた。










(ん・・・?)





しばらくして急にテレビの音量が下がった様に感じた。




気になってチラッと吾郎君を盗み見る。




「ッ!」




彼もこっちを見ていた。




視線を外せない。




「お前、どうしたんだよ」




「ど、どうもしないよ!」




見透かされているようで怖い。




「どうもないわけねーだろ!さっきまでフツーにしてたじゃねーか」




「なんでもないって言ってるだろ!!!吾郎君には関係ない!!」
「関係なくねーよ!!ダチがそんな顔してて放っておけるわけねーだろーが!!しかも自分の誕生日に・・・」




「・・・ごめん・・・」




完全に吾郎君にあたっていた。
せっかく祝ってくれるっていうのに僕は・・・。




「べ、別に謝って欲しいわけじゃねーし・・・。・・・俺に話せねーことか・・?」




「・・・話したくない」




俯き一言ポツリと言うと、吾郎君は淋しそうに「そっか・・」とだけ言って部屋を出て行った。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ