メジャー短編1
□寿誕『今日という日が』
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気まずい空気が充満する中、無駄に流れるテレビの音がやけに耳障りだったが、気にしていない振りをして教科書を捲る。
(ちっとも頭に入らない・・)
さっきから同じところを何度も読んでいた。
(ん・・・?)
しばらくして急にテレビの音量が下がった様に感じた。
気になってチラッと吾郎君を盗み見る。
「ッ!」
彼もこっちを見ていた。
視線を外せない。
「お前、どうしたんだよ」
「ど、どうもしないよ!」
見透かされているようで怖い。
「どうもないわけねーだろ!さっきまでフツーにしてたじゃねーか」
「なんでもないって言ってるだろ!!!吾郎君には関係ない!!」
「関係なくねーよ!!ダチがそんな顔してて放っておけるわけねーだろーが!!しかも自分の誕生日に・・・」
「・・・ごめん・・・」
完全に吾郎君にあたっていた。
せっかく祝ってくれるっていうのに僕は・・・。
「べ、別に謝って欲しいわけじゃねーし・・・。・・・俺に話せねーことか・・?」
「・・・話したくない」
俯き一言ポツリと言うと、吾郎君は淋しそうに「そっか・・」とだけ言って部屋を出て行った。