Red Roze

□大きな誤解と小さな嫉妬                         
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「キミなんか大っ嫌いだヨ。今すぐ殺したいぐらいにサ」

目の前にいる忌まわしい男を睨みつけた。
ああ、何てことだ。愛するボクのマリアに
会いに来たというのに、野菜男なんかと出くわしてしまうなんて。どこが嫌いなんだと言われたら、彼はこう答えるだろう。
「全てだヨ」

「ん?どうかしたのか、アジアン」

「ボクの名前を呼ぶなって言ってるだろう?
そんなことも覚えてないのかい、キミは」

「ほう…そうか。じゃあお前は、本当は俺が
大っ好きなんだな」

「は?」

無視された上に、見当違いのことを言い出した野菜野郎を、思わず凝視してしまった。

いったい何を言い出すんだ、この男は。

ありえない。マリアローズに言うのは当たり前だが、この男に言うなんて、絶対に。

「む?知らんのか。今日はエイプリルフールだぞ。つまりだな…、…何だ。嘘の日だ。
大っ嫌いの逆は大っ好きだろう?」

「なっ………!」

「違うのか?」

虐殺人形の名前で通っている彼も、この男の前では冷静を保っていられない時がある。

彼は今、思いっきり動揺してしまっていた。

「チッ…仕方ない…」
すぅ。

「キミなんか、大っ好きだ!」
「へえ」

冷たい、凛とした声が響いた。
それは、愛しい、何にも変えることが出来ない、愛する人の、冷めた声だった。
恐る恐る振り向くと、引きつった笑みを貼り付けているマリアローズがいた。

「知らなかったよ。君がそんなにトマトクンを好きだったなんてさ」

「マ、マリア…!?違うヨ、それは大きな誤解で…」

「じゃ、二人ともお幸せにね。ばいばい」

「………」

こころなしか引きつった笑顔で右手を振り、背中を向けて走りだして行ってしまった。
せめて話だけでも聞いてもらおうと、声をかけようとすると、後ろから声がかかる。

「ん?…マリアはどうしたんだ?」

「…キミのせいだ」

「む?」

憎しみとどうしようもない怒りを視線でぶつける。この男のせいで、マリアにあらぬ誤解をさせてしまった。
どうしよう。どうしよう。とりあえず…

「殺す」
が、

「俺にかまってていいのか?」

ハッ、としてしまった。
この男に言われるまでもない。
マリアローズを追わなければ。
チッ、と舌打ちをしてからとりあえずこの男については保留しておくことに決めた。

「あ、それとだが―…」


いちおうそのことを聞いてから、
「キミを始末するのは次にしておいてやる。
せいぜい覚悟しておきなヨ」

そしてマリアローズの走り去った方向に、
彼は走りだした。
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