稲妻な部屋。
□キミノコト!
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「………。……はぁ…、」
天を仰いで嘆息を漏らした。
窓越しの青い空と対照的な赤い髪。
最近少し冷たくなってきた風が、それをなびかせる。
「緑川……」
緑川。緑川。緑川。
緑川。
「あぁああぁぁ……っもう!!」
窓枠に添えていた手を叩きつける。じんわりくるはずの痛覚なんてわからないくらいに彼は狼狽していた。
どうしよう。どうしたらいい。さあ俺、この無駄にできのいい頭で考えろ。
緑川が急にかまってくれなくなったのは、ここ最近だった。
いや、別にさっぱりかまってもらえないとか
傍にいることを許してくれないとかそういうわけではないのだが、ただ、近頃めっきりそういうことをすることが少なくなった。
緑川は俺の現役恋人中だということを忘れてしまったかのように、普通の男友達のように、接してくるようになった。そして携帯電話ばかりいじっている。
携帯電話。
「それだ!!」
誰かとメールしているのかどうかはわからないけれど、しきりに文章を打ち込むような動作を繰り返している。まだその時にはこの違和感に気付いてなかった俺は女子高生みたいだななんて呑気に打ち方の評価をしていたのだった。
「………晴矢」
晴矢たちのところだ。きっと風介もいる。
最近晴矢たちとやたら仲がいい。
よく部屋にも行ってるみたいだ。
緑川は俺と喋ってる時よりなんだか楽しそうな気がして、恋人を溺愛する彼としては強烈な嫉妬の目をあの二人に向けないわけがない。
よし、と決めた時にはもう体が動いていた。