龍が如く4-2
□序章
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―――――アジア最大の歓楽街である東京・神室町。
神室町のメインゲートがある、神室町一番街。
煌びやかな、そのゲートをくぐるとメインストリートである天下一通りが広がる。
メインゲートからほどなくすると神室町ナンバー1に君臨するホストクラブ、スターダストが店を構える。
スターダストの真向かいにある5階建ての雑居ビル。
1階 ニューセレナ 餃子大名
2階 空きテナント
3階 個室ビデオ MOVIE
4階 ネイルサロン SUGAR ROSE
5階 スカイファイナンス
雑居ビルの最上階―――
5階にある消費者金融「スカイファイナンス」の代表取締役社長であり、
神室町のシンボルとも言える超高層ビル、ミレニアムタワーの目の前に店を構えるキャバクラ「エリーゼ」のオーナーでもあるその男の名は、
秋山 駿。
32歳。
長身で甘いマスクに無精髭。
襟足までの無造作な黒髪は手櫛でオールバックにしている。
全身黒のスーツスタイルにワインレッドのジャケットを羽織り、
ノータイで胸元まで開けた黒いシャツから見えるゴールドのネックレス。
左腕にはゴツめのゴールドブレスの時計が光る。
ポケットに両手を突っ込み、ダルそうに歩く。
顔馴染みが多いのか、神室町を歩く彼に挨拶をする人も少なくない。
それもそのはず、スカイファイナンスは神室町の駆け込み寺とも呼ばれ、
「無利息無担保で、どんな相手にも融資する」という点のみが噂になって広まっているからである。
スカイファイナンスの融資方法はかなり特殊で、どんな人間にも無利息無担保で融資するが、
代わりに秋山自身が提案した「条件」を相手がクリアする事を課している。
融資額が高額であればあるほど条件は厳しくなり、
「限界まで追い詰められた人間が見せるチカラ」を確かめているのだという。
秋山は日本で最難関と言われる東都大学法学部を卒業し、
東都銀行に勤務するエリート中のエリート……金融工学のプロフェッショナルだった。
だが、身に覚えのない横領の罪を着せられて辞職に追い込まれ、神室町でホームレスとして過ごしていた。
5年前のミレニアムタワー爆破事件により空に舞った100億のうち100万円ほどを拾い集め、
銀行員時代に培った知識と経験で瞬く間に増額し、起業、現在の地位を手に入れる。
従業員は女性秘書の「花」が一人だけ。
花は、事務全般から掃除、秋山の世話に至るまで行なっており、
花が不在の際は目も当てられないほど散らかることも珍しくない。
花は、その外見どおり趣味は食べること。
好物は、韓国焼肉料理店「韓来」の特撰カルビ弁当。
小柄だが意外なまでに力が強く、並の男はおろかヤクザですら叩きのめすほどの実力を持っている。
かつては秋山と同じく東都銀行に勤務しており、秋山の後輩だった。
秋山を頼れる先輩として憧れるだけでなく、淡い恋心も抱いていき、東都銀行時代から8年間、ずっと後をついてきた、花。
なんだかんだと秋山の面倒を見たり最後まで見捨てる事が無いのは、
ただの先輩後輩というだけの感情ではないことは、秋山自身も自覚している様子。
だが、秋山にとっては、花は、妹であり、親戚の世話焼きおばちゃんのような存在としか思っていないのである。
2010年3月―――
この街では日常茶飯事である二つの同時事件。
東城会系の弱小組織である金村興業のシマで起きたチンピラ同士の些細な抗争と発砲事件。
神室町ではよくある極道組織の小さな抗争事件だったが、
それはある計画の伏線に過ぎず、事件を皮切りに露になる、野望を秘めた男たちの本性。
金と権力、地位と名誉。
剥き出しとなった欲望が、激しくぶつかり合った。
事件で出会った1人の女性、リリ。
銀行マン時代の恋人であった絵里を重ね、恋をするが、リリは銃弾に倒れ、この世を去った。
この神室町を舞台に4人の男が出会い、新たな伝説を作った。
秋山がリリに一億を貸したことをきっかけに、花は秋山の元から去ってしまうが、
事件の終結後はこれまで通りの日常に戻り、すっかり痩せて容姿が変わった花を再び秘書として迎える。
しかし秋山は彼女との関係を明確に変えるつもりはないらしい。