龍が如く4-2
□第5章
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第5章 欲望のままに
秋山は集金を全部スムーズに終えると、スカイファイナンスへ戻った。
「ただいまー。」
店内に入るなり、ソファーに深々と腰を落とした。
花は驚いた顔で秋山を出迎える。
「えっ!?社長!?もう戻ってきたんですか!?」
「もうって…真面目に集金行ったよ。花ちゃんの言いつけどおり、全部終わったから戻ってきたんだって。」
「本当に全部終わったんですか!?信じられない……。」
「ほら。」と、集めてきたお金を花に渡した。
「あ、ホントだ……。珍しい……雪でも降るのかしら?あ、それか豪雨だったりして。」
「酷いなぁ、花ちゃん。じゃあ、本当に雪が降ってるかどうか確認しに行ってくるとするか。」
そう言うや否やドアを開けて出て行ってしまった。
「ちょ、ちょっと社長!……あ、行っちゃった…。
ったくもう、集金終わったからサボるつもりだわ!さっさと仕事終わらせて、私も定時に帰ろうっと。」
秋山は鉄階段を降りながら携帯電話を開くと、「今から行くよ。」と手短にRioへメールをする。
腕時計を見ると17時すぎ。
携帯電話の電源を切ると、足早にキャバクラSHINEへ向かった。
店内に入ると、ボーイに出迎えられ、すぐにRioが呼ばれた。
開店間もない店内だが、既に客が何名か入っている。
こんな早い時間から来る客は俺だけじゃないんだなと、妙に感心してしまう。
それだけ、SHINEが繁盛している証拠だ。
ふと、ウチの店はどうかな…と考えていると、Rioが登場した。
Rioは胸を強調したドレスを身に纏い、髪を高く結い上げている。
嬉しそうに秋山を出迎えると、すぐに抱きつき、秋山の腕に絡みついてきた。
「Rioちゃん、今日も可愛いね。」
「えーーっ、嬉しいっ。」
「ちょっと早かったかな?」
「ううん、秋山さんから「夕方くらいに行くよ。」ってメールもらってから、嬉しくて早めに出勤してたのぉ。」
いつもの席に通され、秋山のすぐ隣にRioが座った。
秋山が煙草を咥えると、Rioはスワロフスキーで装飾されているライターを取り出した。
慣れた手付きで火を点けるとRioは秋山の眼を見て微笑む。
「秋山さん、なに飲む?」
「いつもので。」
「はぁーいっ。」
「ねぇねぇ、フルーツ盛り頼んでもいい?」
「ああ、いいよ。」
Rioと秋山は初めて男女の関係を持ってから、恋愛感情未満の友情と身体の関係で繋がっている。
秋山は週に何度もSHINEを訪れ、Rioを指名している。
Rioにとって、秋山は上顧客だ。
Rioからは必ずアフターに誘われ、ラブホテルへ行く、というコースが定番だった。
秋山は昨日の出来事、今日の出来事の全てをRioに話した。
ゆりという女性を助け、病院へ運び、自宅マンションに泊めたこと。
あまりにも美人でスタイルも良くて性格も可愛くて……本気になりそうな女性だということ。
ベビードール姿がセクシー過ぎて、理性が飛びそうになったこと。
キスしたこと。
一緒に寝たが、手を出さなかったこと。
「好きだ」と告白したこと…。
Rioは驚きながらも真剣に聞き入った。
ゆりと谷村が中学時代に知り合いで、微妙な空気感を醸し出していたことも話した。
「谷村さんって姫華ちゃんのお客さんだよね?イケメン刑事さんっ。」
「そうそう。イケメンだよなぁ…谷村さん。」
「でもぉ、私は秋山さんのほうが素敵だと思うよぉ。セクシーな大人の魅力があるもん。」
「Rioちゃんが褒めてくれると嬉しいよ。」
「ホントのこと言ってるだけだよ?」
「女の子の立場から見て、幼馴染って、どう?久しぶりに偶然会ったとしたら。」
「んー…私だったら、嬉しいなぁ。しかも、イケメンで刑事だったらもっと嬉しくなっちゃう。
私を守ってくれる王子様って思っちゃうかもぉ。」
「だよなぁ…。」
秋山は深い溜息を吐いた。
「出逢って間もない子に、本気になりそうで。いきなり告白して。
挙句の果てに谷村さんに本気でヤキモチ妬くなんて……ガキみたいだな、俺。」と自嘲する。
「可愛いっ、秋山さん。なんか純愛って感じ。」
Rioはそんな秋山に母性本能を擽られ、同時に秋山に想われているゆりという女性にヤキモチを妬いた。
「でも、キス…したんでしょ?」
「まぁね、1度目は一瞬だったけど。……ゆりちゃんが風呂から上がった時、白い肌がピンク色に染まって…。
色気があってさぁ。思わず抱き寄せたら、ローブが肌蹴ちゃって…。」
セクシーなベビードール姿のゆりを思い出していた。
湯上りでピンク色に染まった肌。
目の前で大きな胸がふるふると揺れている。
今にもこぼれ落ちそうな胸。
極細のストラップが大きな胸の重みを支え切れずに、胸の上部から谷間の深い部分まで見える。
視線を下へ移すと、柔らかそうな太股の間から見える極小のパンティ。
「秋山さん?……秋山さんってば。」
「あ?うん?」
「んもぅ……えっちなこと考えてたんでしょー?」
「うん、考えてた。ごめんごめん。朝、起きてからも我慢できずにキスしちゃって勃った。」
「えっちなんだからぁ。キスしただけで勃っちゃうの?!あはは、そうとう溜まっちゃってるー?」
「溜まってる。」
「じゃぁ…Rioがたくさんシてあげちゃう。でも、秋山さんをそんなに夢中にしちゃう人、会ってみたいなぁ。……今日は、Rioが秋山さんを夢中にさせちゃうんだから♡」
Rioは秋山へのボディータッチがいつもよりも多く、絡むような視線を送り続けた。
あっという間に時間が過ぎると、Rioが秋山の太腿に手を置いた。
股間まで、あと10センチくらいの場所を執拗に官能的に撫で回す。
それは、アフターでセックスのサイン。
「もう時間だ、じゃあ後でRioちゃん。」
Rioが秋山にそっと耳打ちする。
「ねぇ、早くシたい♡」
ボーイが伝票を持ってテーブルに近付く。
「秋山様、いつもありがとうございます。」
テーブルで会計を済ませると、Rioは秋山を店の入り口まで見送った。
(今日は…私がいっぱいいっぱい慰めてあげるねっ。いつものとこで待ってて。)
Rioは秋山の耳元で囁く。
これから、濃厚な時間を過ごすことを考えると鼓動が高鳴ってしまう。
「じゃあ、またね。秋山さんっ。」
笑顔で手を振ると、奥へ戻って行った。
外へ出ると、神室町は夜の姿を見せていた。
腕時計を見ると、19時になろうとしている。
「もう、こんな時間か…。」
Rioとの待ち合わせは、いつもミレニアムタワー前。
秋山は煙草を吸いながらRioを待った。
ゆりちゃんは、まだ谷村さんと逢ってるのかな…。
考えるだけで深い溜息が出てしまう。
俺、ゆりちゃんに本気で恋しちゃってるな…。
俺がRioちゃんにプレゼントした香水の匂いが風に乗って漂ってきたと思った瞬間、
いきなり、後ろから抱き付かれて振り返るとRioが微笑んでいる。
「ごめんね、ちょっと遅れちゃった。」と言って、すぐに秋山の腕に絡みつく。
先ほどのドレッシーな姿もいいが、私服のRioも可愛い。
胸の谷間が見えるホルターネックのワンピース。
秋山がプレゼントしたネックレスが胸元に光り、アップにしていた髪を下ろし、綺麗に巻いている。
念入りにメイクを整えていたのか、可愛らしさが一層際立っていた。
「さっきのRioちゃんも可愛かったけど、私服のRioちゃんも可愛いよ。」
「嬉しいっ。秋山さぁーんっ。」
秋山の腕に絡みつくと、上目遣いで秋山を誘う表情をする。
「ねぇ…早く行こ。」
秋山はRioの腰に腕を回すと、自分のほうへと引き寄せた。
「今日ね、こないだ秋山さんがプレゼントしてくれたえっちな下着着けてるの。だから早く見て。」とRioが耳打ちする。
2人は神室町の雑踏の中へゆっくりと歩き出し、ホテル街へと消えていった。