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□新雪に足跡
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「買い物行くけど、来る?」
「く!」
どこか行きたい所はあるかと聞いたら特に無いようだったので、遠慮しているだけかなと思いつつも日中は室内で過ごした。
晴季は絵を描いたりテレビを観たり、そういえば昔やったなと思って智明が探し出してきたテトリスをやったりした。いくらもラインを消さないうちにすぐゲームオーバーになっていたけれど、それでも満足したように電子的なメロディが流れる度に「できた」と固まった画面を見せてきた。智明は晴季の頭を撫でて、適当に相槌を打ちながら子供の髪って柔らかいんだなと思っていた。
「履けた?」
「ん……」
「あー、慌てなくていいから。かかと踏んでる」
しゃがんで靴を履き直させてやると、丸い瞳がじっとこちらを見てきた。
(……? 自分でやりたかった、か?)
けれど何を言う訳でもなく立ち上がった晴季は「できた」と呟いて、自分の服の裾を掴んで僅かに俯いた。
「……ん、じゃあ、行こうか」
(何?)
気掛かりではあったけれど、そのまま玄関を出て鍵を閉めた。歩き出すと晴季が小走りでついてくる。マンションの通路から見た夕方の空は、ピンクと水色の混ざった淡い色をしていた。