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□仕方ないから
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「……、頭」
「うるせぇ」
口を開くことも許されない、そんな職場。横暴な上司と非常識な同僚。
「この間けしかけてきた組の措置についてなんだが」
「うるせぇっつってんだろ」
黒い前髪が少しかかる、切れ長の鋭い瞳。眉間には長い年月をかけて形成された深いしわが刻まれている。
吐き捨てるように言った組の頭は眉根を寄せて、思いきり舎弟――というよりはもはや側近に近い――を睨付けた。決して人相が良いとは言えない顔の造りだけれど、こちらを見据えてくる眼差しには何かどうしても目をそらせないものがある。
(……なんで俺、ここに来たんだろうな……)
内心でぼやきながら、数枚の書類を手渡して部屋を出た。ドアを閉める時にちらりと見た頭は既に書類に視線を落としていて、いつものことだけれど態度の割に従順だよなと少しだけ口元が和らいだ。