short

□丘の上の影
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 澄んだ空の青は深い。

 大して強くもない日の光に僅かに目を眇めながら、適当にブレーキをかけた自転車で坂を下る。道は今いち舗装されていない。新品のランドセルを軽快に鳴らしながら駆けていく数人の小学生に知らず笑みが零れて、白川は慌てて自転車を止めた。少し過ぎてしまった家のポストまで歩いて、鞄の中から葉書を取り出す。これを届けたら今日はあと一件、丘の上の家だなと思って再び自転車にまたがった。風が冷たい。

 ひとつ息を吐いた白川は上着のボタンを留めて、市街地を少し外れた一軒家へとペダルを踏み込んだ。



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