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□丘の上の影
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「こんにちはー。郵便でーす」

「……ああ、どうも」


 緩やかな坂の途中から丘の上まで自転車を引いてあがって、ポストの無い家の住人の為にドアをノックする。声を掛けるとややあってから抑揚の無い返事が聞こえた。

 同時に玄関の扉が開く。


「ご苦労様です」

「いえ、こちらお手紙です。……あの、ポストは置かないんですか?」

「ああ、まぁ、郵便屋さんが必要なら作るけど。僕は大体ここに居るから」


 大した広さも無い離島の中で、初めて見る彼は真っ白だった。



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