purify〜神のいない月
□第玖夜
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「隆ー!早く起きろ!」
「うわ、ごめん父ちゃん!」
朝早くから魚を仕入れて仕込みをする寿司屋亭主の河村父。
それを毎朝手伝うタカさんも、今日ばかりは寝坊してしまった。
「珍しいな、寝坊なんてよ。つか大丈夫か?隈ぁ、出来てるぞ。」
真面目な彼。
手伝う事が当たり前になっている今、寝坊をしてしまう方が珍しい。
「ははは、大丈夫だよ。」
そう笑いながらも欠伸を一つ。
結局の所、彼は昨日一睡も眠る事が出来なかったのだ。
だって寝ようとする度に学校でのあの光景を思い出すから。
振り払っても振り払っても、瞼を閉じれば蘇るその光景。
「あははは、全員隈だらけだね。」
朝練に集合したレギュラー達の顔も似たり寄ったりの顔。
あのリョーマや桃城でさえ、だ。
神経質な大石は隈もさることながら、頬も少し痩けている気がする。
「あんな事があったんだ、寝れる訳ないだろう。」
乾はしきりにノートに何かを書き込んでいる。
然し余り進んではいないらしい。
暫くするとぐわぁと書き殴っていた。
・・・信じたくないのは判る。
夢だったんじゃないかとも思う。
でも・・・。
でもこれは限りない現実。
「説明して、くれるんだよね?」
河村は尊大に腕を組んだ女の子を見つめた。
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