purify〜神のいない月

□第伍夜
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「つ・・・・・・!」



蛇口を勢いよく捻り、其処に自分の左腕を突っ込んだ。

痛ぇな、痛ぇよ・・・!

熱を持ったように疼く痛みに顔をしかめる。

一体何だってんだよ!



時間は昨日の帰りがけに遡る。



「おっと、いけねーな、いけねーよ。」
「どうした?桃。」
「部室に忘れ物したみたいっス。」



いつも通り部活を終えて校門を出た所で、部室に忘れ物をしていた事に気付いた。
だから大石先輩に鍵を借りて慌てて一人戻った。
日はすっかり沈んでいて、秋だねー秋だよ、とか思いながら目当てのものを取って鍵をしめた。



「いて!」



皆の所へ戻ろうとして振り返ったと同時に、何かが飛んで来た。
思わず庇った左腕に痛みが走る。
直ぐ様辺りを見回しても暗いせいもあってか、何だったのか判らなかった。
血は出てねぇし、校門に近付くにつれて痛みも引いて行ったから気にしてなかったのに。



「クソッ!」



朝練を始めてからどんどん痛みが酷くなって来やがった。
てきとーに理由付けて出て来たものの、そろそろ帰んねーと怪しまれるよなぁ。



「・・・・・・・・・邪気 。」



小さく呟かれた言葉に振り返る。



「あんた確か・・・。」



其処に居たのは不二先輩と英二先輩のクラスに転校して来たって云うなんとか先輩。

何か用っスか?
そう云う前になんとか先輩は傷口に触れた。



「え・・・・・・?」



痛みが・・・引いていく?

手をかざされた瞬間、ズキズキと続いていた痛みが引いていく。
と云うよりはなくなったって云ってもいいくらいだ。



「一体・・・・・・。」
「棘、刺さってた。」



それだけ云うと彼女は背を向けて立ち去った。



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