purify〜神のいない月
□第陸夜
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「・・・・・・。」
人とは心底不便な生き物よな。
欲を満たさねば生きていけぬ。
泥のように眠る禊を視界の端に捉えながら、柱に背を預ける。
外は明るく時刻は昼と呼ばれる時。
だが恐らく禊が目覚めるのは空に赤みが差してからであろう。
元来それが日常だった。
陽が落ちると共に暴れ出す異形共のお陰で夜は眠れぬ。
故に朝を迎えてから体を休める、霊祓師とはそう云うものだ。
「・・・・・・。」
「どうした。」
予想に反して既に体を起こした禊に首を傾げる。
「・・・変な夢見た。」
力ある者の夢には力が宿る。
未来であったり過去であったり。
何かしらの情報を映す事がある。
「凶事か。」
「何とも。九字がバラツいて私に纏わりついて来る。」
忌々しそうに眉を寄せる。
それは訳が判らず苛ついていると云うよりは、睡眠を邪魔されて気分を害されたような顔だった。
「後で占い直すから少し早めに起こして。」
そう云うや否や再び沈む禊。
それを認めて部屋を後にした。
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