purify〜神のいない月

□第漆夜
2ページ/3ページ




「いい天気。」



晴天、そして日曜日。
こんな日にはサボテンを外へ出して、それからカメラを持って出かける。
空の写真を何枚か撮って、視線を下へ持っていった。



「あれ?折栄さん?」



ファインダー越しに目が合ったのは折栄さん。
彼女は真っ直ぐ俺に歩み寄って来た。



「君も散歩?」
「・・・・・・。」
「折栄さん?」



ただ見上げて来るだけの彼女。
でもしっかり瞳は見つめ返して来ている。
何も云わず、眉間に皺を寄せている彼女に向けてシャッターを押すと、更に深くなった。



「・・・最近変わった事ない?」
「変わった事?」



挨拶なしに本題に入るのが何となく彼女らしい。



「折栄さんが転校して来た事かな。」
「・・・真面目に答えて。」



あれ?
結構真面目だったんだけど。
また表情が険しくなった折栄さん。

くす、正直な人だな・・・。



「変わったと云うよりは何となく感じるというか、違和感がある、って気がするかな最近。」
「・・・・・・何処で。」
「学校で。」
「・・・・・・。」



ああ、またそんな顔して。
折栄さん、笑ったら絶対可愛いのに。



「これ、あげるわ。」
「え?」



手渡されたのは数珠。
黒っぽく年輪みたいな縞模様がある。
思わずその数珠と折栄さんを見比べた。



「パンのお礼だとでも思っておいて。」



それだけ云って折栄さんは歩き出してしまう。
もしかしてこれを渡す為にわざわざ会いに来てくれたのかな?



「ありがとう、折栄さん!」



次→
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ