ペーパー

□時空を超えて
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「土方さん。なに呆けてるんですかィ」

突然鼓膜に届いた声にビクリと肩を揺らすと、隣りにいた幼馴染みの沖田が呆れた顔をして自分を見ていた。
今日は高校の入学式だ。
どうやらクラス発表を見ながら、またもやぼんやりと今朝方見た夢のことを考えていたらしい。
今朝、起きたときには何故だか断片的に夢を覚えていた。こんなことは今までなかったのに……。
あれは一体なんなんだろう。
それがいつも見ている夢だと言うことはすぐに分かった。

「ほら、トシ。式が始まるぞ」
やはり幼馴染みの近藤に促されて、土方は共に講堂に入った。
式が始まる。
それはとても退屈で、思わずはふっと欠伸を洩れた。

「では、今年の新任教師を紹介します」

相変わらず式は続いていた。しかし次に壇上に上った人物に、土方は目を瞠る。

「あ〜、坂田銀八です。担当は現国。好きなものは甘味です」
 
まるで死んだ魚のような眼。全くやる気のない声。
だが、広がる銀色に、土方は眩暈を感じた。

 ――――― やっと見つけた……っ!

土方は何故か込み上げてくる熱いものをどうにか堪え、まるで大輪の花が綻ぶように、その顔に微笑を浮かべた。





2008.6.22(収納)





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