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□二
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つ、と背中が引きつって、わずか顔を歪める。一月の事件でできた大きな傷は、一応塞がったものの一生残るらしい。ふた月も過ぎたのにまだ痛むのがいい証拠だ。
入院中は主に局長と土方君に強制的に仕事を奪われていたので、書類が溜まっていた。隊士たちにとってきてもらってこっそり進めていたのだが、まだいくつか残っている。
あらかた片付けたところで、時計をちら、と見上げた。予定の時間より少し早いが、まあいいだろう。
年に一度着るかもわからない落ち着いた色の振袖を手に取り、着替える。山崎君に用意してもらっていた化粧箱と、鏡台を適当に開き、女らしい顔立ちになるよう顔を変えていく。
少なくとも斎藤壱という男に見えない程度におさめ、これまた用意してもらっていた女物の手提げにそれらしい小物をつめる。鏡で写せば、そこには女が立っていた。
襖を開けてすたすたと歩く。廊下を通ってる最中、丁度部下の友近と林を発見したから早速試してみた。
「こんにちは」
「……え?」
「お、女?あの、すみませんどうして中に?」
おお毎日顔を突き合わせているのにわからないなんて、私は相当化粧が上手くなったらしい。噴き出しながら種をさらせば、二人は目を見開いていた。
「見事に騙されるんだな。私だよ。どうだ、女に見えるかな?」
「それで男だっていうのを信じたくないレベルですよ……」
「胸どーしたんですか?」
「肩パッドをいれてるんだ。それっぽいだろう?」
「ほんとそれでついてるとは思えやせんねィ」
ずしっと肩が重くなって、隣で人の肩に肘を置いている相手を睨む。子供でもやらないだろう。
「君はガキですか」
「こんにちは沖田隊長」
「こんにちは」
「おうっす。ガキ扱いしないってこないだいったのはどの口でィ」
「こういうことをしているからいつまでたってもガキなんですよ。友近、林仕事に戻れ」
「はい!」
「失礼します」
二人がいなくなるのを見守ったあと、すでにアイマスクを持ち出して寝ようとしている沖田君の襟首をつかんで、連れていく。
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