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□二
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「なんでィ」
「丁度いいところに来ましたね。今日は確か非番でしょう?任務手伝っていただきます」
「ハァ?なんで俺がお前の仕事手伝わなきゃならねーんでィ」
部屋に入れて、山崎君から借りていた男ものの衣を手渡しつつ、笑ってやる。
「君、お見合いの話勝手に聞いたそうじゃないですか。あれも一種の極秘事項。
ぺらぺら喋る山崎君にはすでに灸をすえてあります。君も同罪でしょう?私の説教六時間と仕事の手伝い八十分、どちらが有益かなんて考えなくともわかりますよね」
「……その格好は?」
「これからかよさんのところに情報の取引に向かうんですよ。それのための変装、と、かよさんたってのご要望です」
正直要望に応える必要などなかったのだが、あの店に行くなら変装をしなければ魚を逃がす。一石二鳥だから済ませてしまおうという目論見だ。
いまいち納得のいかないような沖田君に洋服を渡して、早く着替えるよう促した。
「時間がなくなってしまいます。急いでください」
「……わかりやした」
「あ、そこに置いてあるメガネと帽子も忘れずに」
珍しく素直にいうことを聞いたな、と思いつつぼんやりと沖田君の着替えを待つ。ゆっくりと春が忍び寄るこの季節、振袖だけでは寒かったか。腕をさすって待っていれば、襖が開いた。
「なんでこの格好……」
「懐かしいですね。よく似合っていますよ」
「そういう問題じゃねーだろィ……」
山崎君が用意したそれは、私が沖田君を拉致ると見越してだったのか、少年用の服装だった。洋服だが、振袖姿の私と並べば違和感はないだろう。
思わず頭を撫でたくなるのを自重し、帽子をかぶり膨れっ面をしている彼を促す。
「行きましょう、時間がありません」
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