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□三
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……その組織に名前があったのは真選組に入ってから知りました。興味もありませんでしたし、毎日をどうやって生きようか、そればかり考えていましたから。

沖田君は何度か私と斬り合ったことがあるからわかるでしょうが、私がそこに連れて来られてまず最初にやらされたのは、ごくありきたりな鍛練です。

刀を持って振るう、簡単な。

私は女の身でありながら、父から鍛えられていました。それはもうご存知ですよね。

そこで教え込まれたのは、父のそれとは違い、確実に人を殺す斬り方でした。私は何も考えず、毎日それを会得しようとしました。


父を助けるつもりで、一心に。


私に与えられたものは、小さな汚い部屋と、毎日そうやって刀を振るうこと、それから掃除です。

そこには天人が作った麻薬に犯されいかれた人間が幾人かいました。彼らの世話は誰もしたがらず、私はそれを押しつけられました。

それ自体は何も苦痛ではありませんでした。父が生きていると信じていたから。

それよりも苦痛だったのは、時折黒服の男に下品な服を着せられ、色里に連れられることです。散々品定めされ、大抵は私の手の剣だこに気付いて買い手は現れませんでした。

そのとき私を慰めてくれたのは遊女だったんですから、可笑しな話でしょう?彼女たちは、物騒な男につれ回された少年のような少女を、遊女にされないように手回しをしてくれたようでした。

そのときくらいから、私は彼女たちを慕っていたんですね。

もし私がもう少し利口なら、黒服の男を問い詰めることぐらいしたでしょう。しかし私はまだ何もわかっていなかった。局長の賢さも、土方君の頭脳も持ち合わせていなかった。


本当に、子供だったんです。


……それで済むわけがないことを、私はまだ認めたくないんでしょうね。私は助けて欲しかった。自分の無益なこの行為が、なんの役にたつのか、時折忘れていました。

自分がなぜ、あの組織にいるのか、わからなくなったりもしました。

何度も君たちに会う夢を見たのを覚えています。君たちは、私を見ると怯えたように後退りしていました。

夢の中で一回は土方君と斬り合ったことがあったように思います。私は土方君を斬り殺しました。

ミツバが、局長が泣いていました。それから、君が黙って私を睨み付けて、その度に目を覚ました。なかなかの悪夢でしたよ。

私は何も、何も理解しないまま、十五になりました。そのときになってようやくその男に尋ねました。父上はもう治られたかと。

彼の返答は、情け容赦のないものでした。


嬢ちゃん、お前まだ信じてたんかい?

父ちゃんはあのとき殺したよ。俺たちが欲しかったのはお前の父ちゃんの血だ。誰よりも人殺しが得意だった父ちゃんのな。これからはあいつに変わってお前がそれをやるんだ。

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