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□三
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「――切った髪置いて、どこ行くつもりなんですかィ」

「っ」


吐息のような言葉がうなじに落ちた、そう思った瞬間、温かいものがそこを這う。ぞくっと身体が痺れるように震える。振り返ろうとすれば、背後から抱き締められて動けなくなった。


「沖田君――?」

「おめー、死ぬつもりだろ」


言葉を失った。

その間にも彼の唇は、啄むように私のうなじに口付けを落とす。甘い声が漏れそうになるのを必死に押し殺し、わずかに藻掻けば拘束が強くなる。


「おきったく――っ」

「死んで、おしまいにして、残された俺たちはどーすりゃいいんでィ?おめーが隊士になったのは、近藤さん守るためじゃなかったのかよ」

「……そう、ですよ。でも、私がいても変わらない。君や土方君がいれば――っ!!」


啄むようだったそれが、いきなり強く首筋を噛んで声が漏れる。それを取り繕う間もなくその口内で肌が舐められ、身体中が悲鳴を上げるようにして私は身をよじった。


「やめっ、……て下さい!」

「俺たちがいてほんとにてめーの代わりになれるか?土方さんと俺がいて、おめーがいなくて、近藤さんが泣かねェと思うか?

近藤さんだけじゃねェや。土方さんだってあの女だっておめーが死んだらキレるぜィ?」


あの女、とはかよのことか。愛してあげられなかった、あの女人。

けれど、極めつけはやはり彼女のことだった。


「それに、姉上はてめーが逝ったら泣きやす」

「っ!!」


ミツバ。

抵抗する力が弱まったのに気付いたのか、彼の拘束する腕の力が緩んだ。もう唇も離れていてほっとしながら、苦笑を交えた言葉を放とうとした、次の瞬間。

くいっと振り向かされ、目と目が合ったと思った瞬間、唇が重なった。


「――っ!」


とっさに身を引こうとしても放してはくれず、噛むような口付けを受ける。

不意に唇を割って舌が口内に侵入したのを鋭敏に感じ、身体がぴくんと跳ねた。それが逆に彼を煽ってしまったのか鋭い追求に、甘い嬌声が無造作に漏れる。


「っん、……ぁ、おき、ったく――」


いい加減に放せと促すつもりだったのに、舌は乱暴に口内を蹂躙する。呼吸さえろくにできないまま、私はただ年下の彼に翻弄されていた。

息が乱れてわずかに喘げば、まるで我慢の限界だといわんばかりにその身を引き倒される。気付けば私は布団の上に組み敷かれていた。

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