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「腹部に一つ、右腕に三つ、左肩に一つ、……ですね。でも本当に病院に行かなくていいんですか?」
新八君に傷を数えてもらい軽い手当てを受けながら頷く。最初脱がされそうになったのを必死に断り、今は坂田さんの着流しを一枚借りて身にまとっていた。
「はい、このくらいなら動けますから。ありがとう、新八君」
「いえ!!でも、あのあまり無理をなさらないほうが……」
「これでも真選組の隊を率いている身ですよ。大したことではありません。坂田さん、早速ですが家の確認をさせていただいても構いませんか?」
新八君を有無を言わせずに黙らせ、坂田さんへと話の矛先を向ける。彼は私の着流しを洗濯機に突っ込んでから振り返った。
「その格好で行くわけ?いやー銀さんおすすめしないわ」
「あ、着流し……」
「今度届け行くよ、神楽が。散々奢ってもらったしこれくらいはタダで」
正直これくらいで金をとられたらたまらないんだが。
神楽がお茶を淹れたのか居間へと戻ってくる。イチゴオレだけそのまま四角いパックを坂田さんの顔面に投げ付けられた。
「ブフォアッ!!」
「あ、手滑ったアル。ごめんネ銀ちゃん」
「神楽俺になんの恨みあんの……?」
「え?なんのことアルか?」
ビシャアッッ!!
「あ、すみません、銀さん。手が滑りました」
坂田さんからぽたぽたとお茶がしたたり落ちていた。彼は無言のままである。ぶっかけた張本人は何事もなかったかのように、こちらへすたすた歩いてきた。
不気味な沈黙が漂う。……あ、あれ?いわゆる反抗期だろうか。
「あの、新八君?神楽?」
「どうかしましたか壱さん?」
「アレなら気にしなくていいネ。いつものことアル」
「わかりましたすみません俺が悪かったです。砂糖君一服したら出ようか。スクーターで乗せてきますはい」
「わかればいいアル」
「お客さんは神様ですよ銀さん」
つまり、私に対する態度が気に食わなかったということだろうか。喜べばいいのかわからないまま、とりあえずびしょびしょ状態で微笑む坂田さんにいう。
「あの、風邪を引きますから着替えたほうがいいですよ……」
「うん、うん、いってきます……」
初めて学んだ。
万事屋で一番の権力タッグは子供二人だ。
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