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□四
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「反抗期の子供持つと辛いわー」

「坂田さんの兄弟、ではありませんよね?」

「どう見ても違うでしょ」


坂田さんの運転するスクーターに、二人乗りして家のある場所まで向かう。本来なら取り締まる立場だが、まぁこれくらいならいいだろう。基本的に交通面の規制には関わらないからわからない。


「なんかたまたま知り合って懐かれただけだ。馬鹿食いする子いるしご飯大変だしで困る困る」

「夜兎を懐かせるのは難しいでしょうに。新八君だってしっかりしてそうですし」

「神楽がバラしたの、それ?」


舌を噛みそうになりながら会話をする。坂田さんの背中にひっついているだけでも一苦労だ。

声音がわずかに変わったことに気付かぬふりをして応えた。


「推測で尋ねたら当たってました。神楽はいい子ですね、女の子らしくて」

「あれがあっ!?」

「ええ、十分女の子らしいと思いますよ。大人になったらきっと綺麗になるでしょうね。楽しみです」

「じじくせえ、いや、ばばくせえ、か?」


ふざけた問いかけに見えぬとわかっていながら肩をすくめる。ああまではっきりバレたのは初めてだった。


「どちらでも構いませんよ。私はどちらに見えます?」

「今の状態なら間違いなく女だね。いい女。家なんか見に行かないで、ホテルでもいっちゃう?」


身体が密着しているからだろうこその言葉に苦笑する。よく新八君は悪影響を受けずに育ったな。

ひっつく力は強めずに、肩越しの耳に囁いてやる。


「この身体では君をろくに満足させることもできませんよ。遠慮させていただきます」

「……なぁいじめ?銀さんちょっとムラムラッてきたよ?」

「お可哀相に」


さくっと切り捨てて答えればはぁ、とため息が後ろまで聞こえてきた。くすくすと笑って耳元から顔を遠ざける。


「あ、あれあれ」


片手を放して坂田さんが指差したのは、長屋だった。一室の前に一人、女性が立っている。坂田さんに気が付くと彼女はぺこりとお辞儀をした。

上品そうに見える淡い桃色の衣に、優しい蜂蜜色の髪が映える。私と目が合うと彼女は柔らかく笑った。


「いい女だよなー」

「ええ、美しい。裏の人間じゃないなら愛でたんですが」

「……あんたってレズ?」

「安心してください、神楽にはまだ手を出しませんから」

「まだって何イィィッ!?」


冗談ですよ、と笑いながらスクーターを降りる。長屋の隣にそれを置いて坂田さんと戻れば、彼女はこちらを振り向いてやはり笑った。


「はじめまして、八代誉と申します。あなたが斎藤さんですか?」

「ええ。君のように綺麗な方がお相手で光栄です」

「どこのホストだよ……」


くすくすと笑う彼女と呆れた様子の坂田さんに、軽く肩をすくめることで応えておく。


「んじゃ部屋見るか」


促されて三人で部屋に向かう。途中の部屋から漏れる声の数々に、相当変人が集まっているだろうことが伺えた。大丈夫かな。

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