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□四
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あまりにも無防備に眠りこける斎藤の髪を、そっと撫でた。前よりも格段に短くなってしまったそれは、心なしか色も淡いブラウンに染まっている。

別人のようなのに、こうやって見せる無防備過ぎる姿は変わらなかった。


白くて傷痕だらけの肌に、そっと唇を寄せる。彼女自身じゃ決して気が付かないようなところに、点々と赤い花を咲かせていく。ただ愛しさのままに、優しく、強く。


「俺が、てめえの裸体見ただけで、諦めるとでも思ってるんですかィ」


起こさないように、そっと耳元に囁いた。これで夢見が悪くなるならそれでもいい。むしろこんなに俺を焦らして、あまつさえとんだお預けを食らっているんだ、悪夢ぐらい甘んじて受けてもらいたい。


最後に呟いたその呼び方は、なんだ。


本当に諦めさせるつもりなら、今まで通り沖田君といえばいい。なのに、どうして。

幼少期の頃の、あの愛しい呼び方を。


あんなに切なそうに呼んだんだよ。


「……諦めるわけ、ねえだろィ」


最後に一つ、咲かせた場所は。


白い、うなじ。


てめえは目を覚ましていつも通り生きればいい。夜が来て、俺が思い知らせるまでは。

知らねえふりして生きてろ。


赤い花を知るのは、俺と、夜だけ。


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