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「ちょ、待て待て待て落ち着こうか伊藤君」
「斎藤です。私は落ち着いていますよ?隠れ家と、その筋の女性を紹介していただきたいだけです」
「いやいやいや、隠れ家って簡単にいうけどどんなもんとかいろいろあるでしょ条件が。しかもそういう筋の女なら俺たちよりそっちのほうが見つけやすいんじゃないの、佐藤君」
「斎藤です。場所は屯所から遠く、できれば繁華街、遊里に近いほうでお願いします。ありきたりな小さな住まいだとなおのこと。女性に関しては、懇意にしていた情報屋に頼めないことになりまして。駄目でしょうか?」
「頼めないってなんで?揉め事?」
「痴話喧嘩をしましてね。愛想を尽かされてしまいました」
苦笑を漏らし平然と応えれば、銀時さんは眉をわずかにひそめた。さすがに騙されてはくれないか。
「彼女に関しては調べればすぐにわかると思います。でも、今回の厄介ごとには関係ありませんから」
「なるほどなるほど。じゃあ早いけど報酬の話しよう。いくら出してくれんの?」
……完璧に疑われているな。呆れながら思う。むしろ疑わなかったらとんだお人好しだ。
「ものを見てから、というわけにはいきませんか?その間の家事などは任せてくださって構わないので」
「すみません今はどちらにお住まいですか?屯所を出てしまったように見えますけど……」
恐々と新八君に尋ねられこくりと頷く。
「はい今は知り合いの女性のもとに住まわせていただいています。あ、もちろん家事をやることになればそちらから通いますからご安心を」
まるで一人のようだがそれは違う。なにせ今の所在地は娼館だ。
「そちらでは駄目ってことなんですか?」
「彼女らを巻き込むのは忍びないので。そういった業界の人ではありませんし」
「俺たちがその業界に精通してると思ったわけ?」
「え、違うんですか?」
なのにどうして土方君は私に彼らを勧めたのだろう。小首を傾げれば、銀時さんは困惑を交えた顔で頭を掻いた。
「いや、まぁいるっちゃいるけど……。あんたに合うかは別」
「構いません。親しくなれる自信もありますし」
「なら、まぁいーか。いつまでに用意すればいい?」
「できる限り早く。女性のほうは多少遅くとも問題ありませんが、借家は早めにお願いします。検討がつきはじめたら連絡下さい。こちらで確認して決めさせていただきます。そのとき家のほうの料金はお渡しする形で」
「あーうんうんわかった。希望は?」
「ありきたりな小さな住まい。長屋の一室でも構いません。夫婦が穏やかに暮らすに適したような」
「神楽今の覚えられた?」
「んなわけあるか」
「新八ー」
「メモりました」
「ありがとう」
「いえいえ!」
新八君はなるほど優秀だった。嬉しそうに笑うところは少し幼さを感じさせる。親友の弟とは大違いだ。
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