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「それでは銀時さん、よろしくお願いしますね。連絡先はこちらです。深夜でなければ出られるので、決まり次第連絡下さい」
「随分急いでんだな」
「もっとゆっくりしていけばいいアル」
ぎゅうっと腕を抱き締められて苦笑する。その仕草は確かに、確かに可愛いのだが。
「……」
ミシミシいってる。腕が。ミシミシ。
「か、神楽……?君は私が嫌いなのか?」
「そんなわけないアル!!ただこないだのご飯美味しかったなぁって」
「あんまりそういうこというもんじゃねーぞ神楽。なぁ新八?」
ふと見れば新八君は既に銀時さんに拘束されていた。口をふさがれかつがくがくと頭を降らされている。神楽も放す様子はない。
「………神楽、放して」
「嫌ヨ」
「これじゃあ出かけられないだろう?」
その一言を言った瞬間、共犯者二人が飛び上がらんばかりに目を輝かせた。死んだ目が生き生きしているのは、うん、なんというか。
「斬りたい」
「はっ!?」
「なんでもないですよ。そろそろ新八君を放して差し上げたらいかがですか、銀時さん」
笑顔で返しながらいえば、銀時さんは新八君の口から手を離した。ぜえぜえと苦しそうなのが実に可哀想である。
「なんかその銀時さんってのは嫌だなぁ絶対。銀さんとかがいいなー砂糖君」
「砂糖じゃありません斎藤です。では坂田さんとお呼びします。神楽、着替えておいで」
「壱マミィみたいネ!!着替えてくるアルー!」
「男の人にそれはないと思うよ、神楽ちゃん……。壱さんでもほんとにいいんですか?僕たち二日はろくなもの食べてないので、相当食べると思いますが……」
特に神楽ちゃんが。
新八君はそういいたげな眼差しを神楽が駈けていった部屋に向ける。この展開になるだろうことは予想していたから、金はある。二日ぶりだとは思わないから足りるか不安だが。
引きつった笑みを浮かべながらうなずいて応える。
「多少オーバーしても大丈夫ですよ」
経費と称して落としてもらおう。
坂田さんはその言葉を聞くと嬉しそうににやにや笑った。嬉しそう、なはずなのに、やはり目は死んでいる。意味がわからない。
「太っ腹だねー金持ちなの?」
「公務員が金持ちなわけないでしょう……?私はアルバイトをしているので。あ、これ土方には言わないで下さいね、叱られます」
「いいこと聞いたなぁ」
「壱ー!!着替えてきたヨ!!早く行こう!」
「現金すぎでしょ神楽ちゃん……」
がやがや騒ぎながら万事屋を出る。近くのファミレスで勘弁してもらいながら、ちらりと考えるのは。
「山崎君大丈夫かな……」
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